うついろヘルスケアへ | 鬱色時代へ
こうなると、壊れます
◇頭がパッカーン!燃え尽きる!
◇目的を喪失させる
何年にもわたって同じ職場で同じ仕事だけを要求し、評価を変えない
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人は誰でも飽きます。同じ仕事を続けさせると、スキルも上がって暗黙知も増えてくるはずだのに、評価は何も変わらない。同じことの繰り返し。するとどんなことが起きるかというと、だんだんと「喪失感」「無力感」「虚無感」に囚われるようになります。
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ある社員をじわじわとおかしくさせる方法があります。同じ職
場で5年間滞留している社員A(先輩)と、B(後輩)がいて、2年ほどでBが先に異動し、かつBが先に昇進する-これ自体はよくある話ですが、これを数年のうちに2、3例ほど続けていくのです。するとAは「自分はいつまでこのままなのだろう」と、疑心暗鬼で確実に壊れていきます。一緒に働いた身近な人が先に昇進すると、
人情として一般的にはどうしても穏やかでいられなくなりますからね。それを波状攻撃で重ねて続けていく。さらにここへC(同期や後輩など)をAの近傍部署の上司としてあてがえば、Aはそう遠くないうちに、嫉妬やみじめさで発狂するでしょう。でも、こういうことは全国津々浦々、どこでも普通に行われています。それでも食っていくためには、狭い社内での「評価」など、気にしないことです(そして本来、人の評価は自分とは比べるものではありません)。
⇒ (対策)数年のスパンでジョブローテーションを行う。異動時期には今回の分掌の目的を(それがたとえ建前であっても)全員に説明する。
職場Aで成果を上げた社員を、評価を変えずに、同じ業務を行う職場Bに配置転換する
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職場Aで成果を上げ、晴れて職場Bへ・・・行っても同じことをさせ続けたとすると、その社員は「いつまで同じ仕事をするんだろう・・・」と思うことが増えてきます。要は、上記「同じ仕事をさせる」の、「場所だけ替えたバージョン」ですね。環境が変わる分、気づきにくいのですが、結局は「同じことの繰り返し」をさせられているだけ、ということですね。人は「いつまでやるのか」のゴールが見えないと、徐々に
その精神が蝕まれていくものです。
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このケースでは、成果をあげたのですから、この社員は例えば「短距離走」のつもりで一生懸命走り切った・・・わけです。しかし、そのゴールテープを切ったとたんに「実はこのコースを走るんだよ」と言われて突然のトラックチェンジが行われ、しかも、そのゴールがまったく見えないということになるわけです。短距離走でいくべきか、中距離走でいくべきか、長距離走か、はたまたマラソンか・・・「走り方」が分からないのに「とにかく走れ」と言われているようなものです。
このまま同じことを続けるのは、無理ですよね。徐々に、しかし確実に、燃え尽きていきます。
⇒ (対策)成果に対して、都度適切なフィードバックを行う。フィードバックの行われていない状態で安易な配置転換をしない。
⇒ (対策)順当な論功行賞。適当な役職をつくってあてがうのも有効。
同一の職場において過労で休退職した社員の後任の業務を、人員補充をせずにそのまま引き継がせる
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過労で休職・退職した社員の後任に、人員補充をせず、ただ同じ仕事をそのまま与えれば、その後任者がおかしくなって当たり前です(誰かが「過労でやめる」というのは、個人因だけではありません。必ず組織因があります)。ましてや、「抜けたから単にあてがった」だけでは、後任者は目的意識を持とうにも持てるものではありません。
ただこういうことも、日常的に、ごく普通に行われています。
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「抜けたから、安パイにやらせる」というのは、期間限定(例えば、半年後には体制を整えるから、そのつなぎとしてよろしく頼む)であればまだ何とかなるのでしょうが、「とりあえず頼む」という状態で任せると、そう遠くないうちに後任者は適応障害やら何やらを発症して戦線を離脱します。
こうなると、どんどん「歯抜け」状態になっていき、「人が壊れる職場」一直線です(繰り返しになりますが、誰かが「過労でやめる」という状態は必ず組織因があって、決して普通の状態ではないからです)。
⇒ (対策)「過労で」誰かが抜けたら、必ず原因を究明し、かつ、当該の業務調整をして、複数で痛みを分担する体制で穴埋めをする(ベストは人員補充だが、それは期待できない前提)。
大きなプロジェクトが終了した直後に、間髪を入れず次のプロジェクトに参画させる
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機械ですら「休ませる」ことが必要です。人間も同様。使ったら、休ませないといけません。でも、休ませずに使い続けるという発想、驚くほどそこかしこに蔓延しています。
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「あの人は、例のプロジェクトが終わって空いているから、このプロジェクトを与えて大丈夫」という言葉が飛び交う職場は、人を壊す職場です。「あの人は、例のプロジェクトが終わったばかりだから、別の人にこのプロジェクトは任せよう」となるのが
、本来あるべき健全な姿でしょう。
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1つの企画を動かした後に、間髪入れずに次の企画を入れ込むのは、人を人と思わない鬼畜の所業です。
⇒ (対策)1つのプロジェクトが終わったら、当該社員は一定期間、休ませる(強制的に長期休暇を与える、一時的に担当の業務量を減らす、当面大きなプロジェクトを任せないなど)。
◇残業や休日勤務を強制する
テレワークやフレックス勤務を盾に、勤務時間管理を野放図にしている
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テレワークやフレックス制度を錦の御旗にして、一切勤務時間管理をしない職場。でもそれってむしろ「普通」の姿ですよね。毎日毎日深夜残業をしていても、データ上は「残業ゼロ」だったら世話ないわけです。
朝活と称して早朝に「残業」せざるを得なくなっているケースもまた同様。危険です。
⇒ (対策)PCの起動時間を管理する。勤怠報告と実際のPCの動時間との乖離を「記録」する制度などが有効。できれば、早朝・深夜・休日のPCを物理的に起動できなくする仕組みを導入するのも過剰勤務の抑止策になる。
就業時間後や休日の電話・メール対応を前提とした業務体系になっている
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社用の携帯を持たせて何も制限をかけていないということは、夜遅くや休日も電話・メールに対応すること前提、ということです。法的な規制がない限り、「常に誰かに追いかけられる怖さ」
がつきまといます。
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また、そもそも、後述しますが業務量調整の不備や担当業務外の業務のアサインメントによって、「残業」「休日出勤」を前提とした業務を組んでいるというケースも散見されます。「自分の仕事は夜になってから」「作成物は休日に自主的に取り組もう」とか
。むしろそれがデフォルトになっているわけですが、それってよく考えると異常ですよね。
⇒ (対策)早朝・深夜・休日の社用携帯を物理的に起動できなくする仕組みを導入する。
◇担当業務と直接関係ない仕事を強要する
過剰な勉強会への参加等、主幹業務外の業務を多数アサインメントし、個人業績に影響を来している
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やたら勉強会だらけという職場、危険です。どうしても業績が上がらないのは、景気のせいでもスキル不足なのでもなく、案外、社員に「勉強会」ばかり参加させているからかもしれません。だって、仕事しないで画面を見て仕事をした気になっているんですもの。
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稼ぎ頭に主幹業務に集中してもらえる環境を作ることも、大切なメンタルヘルスケア。毎週毎週勉強会に時間を割かせておいて、「訪問回数は確保してね」「コンタクト数は守ってね」
「業績は普通にあげてね」というのは、正にサイコパスのやることです。
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特定の社員に勉強会の講師をやらせすぎているケースもあります。
よくありがちなことですが、誰かにスポットライトを当てすぎると、やがて焼け焦げます。光が当たりすぎて、逃げ場(陰)がなくなるので、確実に頭がおかしくなってくるのです。
⇒ (対策1)勉強会の絶対数を減らす。
⇒ (対策2)特定の社員にスポットライトを当てすぎたら、しばらくクールダウン期間(本来の業務に集中させる時間、日の当たらない期間)を意図的に設定する。
個人の業務範囲や業績評価と関連性の低い会議やミーティング、打ち合わせへの参加を過剰に要請している
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こちらも同様。特に参加しなくても問題のない会議、「設定しているから参加するだけ」の打ち合わせ、本当に必要ですか。「いてほしいから一応参加して」というミーティング。「必要じゃないのにな」と思って参加するミーティングの精神的なダメージは相当なものです。
⇒ (対策)会合の絶対数を減らす。1つの会合の絶対時間を決める。部署内の重要事項の調整は選抜者で行うなど、「決定プロセス」そのものを簡素化する。
◇業務量調整に不備がある
適切な業務量調整を行わず、特定の社員に仕事を偏らせている
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世の理として、「できる社員に仕事が集中する」という現象があります。スピードと質が高い人材に仕事が集中しがちなことは事実ですが、適切な分配を欠いていると、どこかでその構造が破綻します。
当該者に「やらせなくてよいこと」をさせていないか、目的なく適当に仕事を割り振っていないか、社員のスキルに関係なく一律に課しているタスクがないか、などはよくよく考える必要があるでしょう。
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上述の勉強会も、参加しなくてもよいスキルの社員にも「一応」参加を強制していたり、特にキャリアの浅い社員向けのタスク(客先訪問○件など)を、それが不必要な社員にも一律に課したりしていることはないでしょうか。また、そもそも職掌の範囲が大きくなっている社員に対して、やらなくてもよい業務を平等に割り振っていないでしょうか。「みんなで同じことをする」時代ではありません。
⇒ (対策)担当者の仕事量を定量化する(時間、アウトプット、担当数、売り上げ数など)。極端な業務の偏在が見られれば、調整する。
業務量の比較的多い社員Aと、比較的少ないBとで、定量評価項目を割合で揃えている
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例えば、ルート営業のノルマを考えてみましょう。社員Aが50件、社員Bが20件担当しているとして、「今月は4割と面談して、うち2割で成約」という目標が掲げられたとすると、社員Bは8件の面談で2件の成約が得られればノルマクリアなのに対し、社員Aは20件面談を組んで10件の成約が必要となります。これは極端な例ですが、実際にはこのように、「割合」で目標を決めて、知らず知らずのうちに業務量の多い社員を精神的に追い込んでいるケースが少なくありません。同一部署内で業務に偏りがある場合、「割合」で評価をすることは、簡単に人を壊す方法の筆頭と言えます。
⇒ (対策)部署内で業務量が偏在化している場合、社員同士の業務目標は「割合」ではなく「絶対数」で揃える。上記の例の場合は、「10件と面談し、2000万円成約する」など「絶対数」で比較できるような目標とするほうがよい。
様々な施策が縦割りになっており、現場にそれぞれの施策ごとに過重な目標が下りてきて、それを総合的に調整する(横串を差す)機能がない
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よくありがちな話です。見分け方は簡単で、何か施策を動かすときに2部署同士の調整はできても、3部署以上がまたがると破綻しがちな組織がこの典型です。こういう組織は、まさにこの「縦割り」の陥穽にハマっていると言えるでしょう。
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全社にとって重要な業務A、業務B、業務C・・・があって、スタッフ部門がそれぞれの業務に過重な目標を課して、それがそのまま現場に下りてくる。すると、現場の真面目な担当者は、例えば施策Aでも、Bでも、Cでも100%を目指そうとします。しかし、実はAは7割仕事、Bはとりあえず「形だけ」やっておけばよい仕事でよく、Cだけライン部門の競争項目だから上司も躍起になって数字をあげたがる・・などということはよくある話です。
⇒(対策)理想は「総合調整機関があること」なのだが、実際は「総合調整機関」が新たな仕事を生み出す(余計な勉強会や報告書など)という愚を犯すことが目に見えているので、ここは現場の上司が総合調整機能を果たすしかない。例えば「会社はAもBもCもおろしてくるけど、とにかくCだけは勝て。Bは報告だけでいいから。Aは、まあ、隣に負けないくらいでいいかな。」といって調整するのが「捨て所を分かっている上司」ということになる。これをそのまま流すだけだと、真面目な人ほど「全部100%」を目指してしまって大変なことになる。
◇「即レス」ストレスが顕在化している
*この項については、オンライン疲れの傾向と対策に詳しくまとめました。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。
社内コミュニケーションツール(TeamsやSlackなど)疲れ
- 「いいね」強要、「チャット」即レス対応。気を抜くことのできない「割り込み」タスクの頻出で、脳のキャパシティが限界を迎えています。
⇒ (対策)社内コミュニケーションツールは「情報を掲示しておく場所」として使用し、情報のやり取りに使用しない。例えば「いいね」機能は可能な限り使用しない、チャットは使わずSMSなど別の連絡手段を使用するなど。
メール疲れ
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CC地獄、セキュリティへの対応(添付ファイルパスワード、容量制限、外部メールチェックなど)。1つのメールを送受信するだけで「やる動作」が多すぎて、脳のキャパシティが限界を迎えています。
⇒ (対策)必要以上にCCを入れない。「承知しました」レベルの返信にはCCを含まない。
ビデオ会議(Zoomなど)疲れ
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「顔出し」強要、「コメント」強要。反応が分からない状態でプレゼンする恐怖。「不自然なコミュニケーション」だらけで、脳のキャパシティが限界を迎えています。
⇒ (対策)顔出しを強要しない。コメントを強要しない。見ればわかることをわざわざプレゼンさせない。
公開開始:2022年1月6日
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