2016年の出生数が100万人を割れて大騒ぎになったのもつかの間、2022年にはそれからわずか6年であっという間に80万人割れという急速な少子化が進行している。
そして2023年末、どうやら同年の出生数が72万6000人程度になりそうだとの推計結果が公表された。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(令和5年推計)を見ると、2023年に「72万6000人」というのは、出生数高位推計(2023年:85万2000人)からはすでに大きく外れ、出生数中位推計(2023年:76万2000人)からも乖離し(ちなみに、2039年の推計値と同値)、すでに、出生数低位推計(2023年:67万8000人)に近い数字になっていることを強く指摘しておきたい。
問題は、低位推計ですら「22-23年比 -3.55%」という減少率であることだ。実際の減少率はもっと深刻で、「22-23年比 -5.8%」という惨憺たる状況になっている。
ここからは、「23年のような減少率(概ね5.8%)が続いた場合のシナリオA」、「過去5年の平均減少率(概ね4.5%)が続いた場合のシナリオB」、「過去10年の平均減少率(概ね3.2%)が続いた場合のシナリオC」で、それぞれ今後の出生数がどうなっていくのかを簡単にシミュレーションしてみたいと思う。
国の低位推計を見ると、出生数が50万人を割るのは「2050年」と見込まれている(中位推計や高位推計では2070年までその事態は想定されていない)。しかし、今の急速な減り方を見ているとそこまでとても持たないのではないか、という感覚があり、独自にシミュレーションをしてみた。
最も悲観的なシナリオA(減少率5.8%が継続すると仮定)の場合、2030年には出生数が「47万3000人」で、早々に50万人を割り込む。2023年から数えてわずか7年先、100万人割れから15年もしないうちに出生数が「半減」というシナリオだ。にわかには信じがたいが、若者がどんどんと結婚しなくなっている現状を見ても(20代~40代の未婚男女のうち、交際経験なしは34.1%で過去最高。「リクルート 恋愛・結婚調査2023」より)、あながち外れてはいない数字ではないかと考えられる。
ちなみにもう少し楽観的なシナリオB(ここ5年の減少率のトレンドである減少率4.5%が続くと仮定)であっても、「50万人割れ」は2031年の推計だ。希望を持つために、さらに楽観的なシナリオC(ここ10年の減少率のトレンドである減少率3.2%が続くと仮定)をとっても、「50万人割れ」は2035年頃となる。
―そう、どうあがいても、もしこのままの減少率トレンドが続くとなると―このままの減少率トレンドが続く場合であるが―2030年代には「出生数50万人割れ」の時代がやってくる「可能性」があるのである。
「一人で過ごすことができる」(一人で過ごすほうが気楽)という「感情」の面からも、また将来不安と可処分所得の深刻な減少といった「経済」の面からも、既に結婚へのインセンティブが若者社会から急速に失われていることは論を俟たないだろう。ここへきて、2020年~2023年初頭までのコロナ禍が追い打ちを掛けている。すなわち、ほんらい「新しい出会い」が多いはずのこの時代を過ごした大学生・新社会人(ざっと120万人×5学年相当=600万人)の「出会いの場」はものすごく少なかくなったことが想定される。おそらく、この層はますます、「おひとり様」傾向を強め・・・彼ら/彼女らが適齢期となる25~30歳を迎える向こう5年くらい(2024年~2029年)の婚姻数にも大きく影響することだろう。
婚姻数が低下すると、出生数も減る(両者には相関関係がある)。今の出生数は「コロナ前に出会って、結婚してコロナ禍での出産を控えた(そして、ある程度コロナが落ち着いても出生数は上向かなかった)」といった数字も反映されているものと推察されるが、今後は「コロナで出会いがなく、結婚もしないので出産そのものが発生しない」という数字もはっきりと出てくることになるだろう。
これを裏付けるように、23年の婚姻数もついに50万組を割って、前年比-7.6%という勢いで減っているという(婚姻数なので、初婚だけでなく再婚も含めての数字であることに留意)。ここから敷衍すると、24年の出生数は70万人を割れることがほぼ確実という論説もある。コロナ禍の影響を考えると、ここからさらに数年間は、婚姻数も減り続け、必定、出生数も坂道を転げ落ちるように減っていく可能性があるのだ。
もしかすると、「50万人割れ」がもっと前倒しになる可能性だってなくはないのだ。