ワイヤレス掃除機が壊れてしまったので、実物を実際に動かしながら試してみようと思って家電量販店へ行く。
当然、国産メーカーのものに買い替えるのだろうな、と思ったらさにあらず。実際は、アメリカで掃除機のトップブランドだという、Shark製の掃除機を購入することになった。
「そうそう、こういうのでいいんだよ」という機能性や、操作性、シンプルさなどに惹かれたのが購入の理由だが、同時に、本当に「失われた30年」で「家電」の分野でさえ、日本が立ち行かなくなりつつあることを実感した。
すでに、デジタルガジェットの分野では日本メーカーのものがもう、ほとんどない。
自分の家にあるデジタル機器を眺めてみても、プライベートのPCはLenovoとMicrosoft(Surface)であるし、携帯もPixel(Google)とiPhone(Apple)である。タブレットもiPad(Apple)が2台とFire Tab(Amazon)、オンデマンド配信デバイスはFire Stick(Amazon)。見事に、GAFAM製品でほぼ独占している。DVDプレーヤーはASPILITY(エスキュービズム)で唯一、日本メーカー。あ、、もう年賀状も部数を絞ってオンデマンド印刷に切り替えたのでほとんど使っていないが、プリンタはキヤノンであった。
そういう意味では、ゲーム機として任天堂の3DS、Switch、Switch riteが世界規模でトップを張っているというのはすごいことだな、と思った。
一方、白物家電や生活家電に目を向けてみると、まだまだ日本メーカー製が多い。
テレビはPanasonic、冷蔵庫はSHARP(日本メーカー時代)、炊飯器は東芝、食洗機はPanasonic、洗濯機・乾燥機は日立、エアコンは三菱、といった具合である。
ちなみに、電子レンジはツインバード、オーブンレンジは山善、布団掃除機はアイリスオーヤマ、布団乾燥機は象印、ドライヤーはPanasonicーと、すべて日本メーカーであった。
・・・と、考えた時に、やはり我が家における国産メーカーの牙城が、まず「掃除機」から崩れたというのは、なかなか衝撃的な出来事だったのである。
なお、余談だが「敢えて電化生活から手動に戻った」ものもある。1つが電動歯ブラシ。いわゆる「ジレットモデル」で、むしろ歯ブラシを買い替えたほうが圧倒的に安いと気づいてしまったことが原因。もう1つが電動髭剃り。これも、使い捨ての髭剃りを丁寧にメンテナンスすれば、1本で何か月も使い回せることに気づいてしまったので使わなくなってしまった。そしてロボット掃除機。当初はとても便利で重宝していたのだが、毎回「床を片付ける」必要があるのが面倒くさすぎて結局使わなくなってしまった。今後、こういう「手動に回帰する」ものも増えてくるような予感がする。
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ここで、厚生労働省『労働経済白書』『人口動態統計』、総務省『統計局人口推計』、財務省『国民負担率』、内閣府『国民経済計算』を参考資料として、2000年から20年間の日本の経済の弱り具合を確認しておきたい。
このグラフは、20年間の「現金給与総額(月額)」と、国民総所得に対する税金・社会保障への負担を示す「国民負担率」の推移を示したグラフである。
実質GDPは20年で8.2%の成長を見せているにも関わらず、給与はこの20年で1割以上も下落した(89.86%になった)。一方で、国民負担率は12.3ポイントも上昇している。
20年でわずか8%という超低率の経済成長の果実は「給与減」「国民負担率増」でスポイルされているため、景気回復の実感などないのが当たり前で、むしろ生活は格段に苦しくなっているとみるのが当然といえる数字である。
ちなみにこの間、人口は0.6%(ピークの2008年比では14年で-1.5%減)の減少に転じた一方、労働力人口は102.5%とむしろ微増。一方で出生数は、119万人から84万人へと20年で35万人も減少。これは率にして何と「約3割減」というとてつもない数字になっている。直近のニュースでは、22年上期の出生数がついに40万人を割った(前年よりも5%ショート)というから、いよいよ「出生数80万人割れ」も現実味を帯びてきた。わずか6年ほど前に「出生数100万人割れ」が騒がれたばかりなので、とてつもない勢いで少子化が進行していることが裏付けられている。
完全にシュリンクした経済下、これで国の活力が失われないほうが不思議である。
上記で挙げた家電が、米中韓欧台のメーカー名に根こそぎ変わる日が・・・そう遠くないのではないかという危惧が、もう笑えない現実となっているように思う。
2022年9月3日