2018年1月アーカイブ

【常識(じょうしき)】
一般の社会人が共通にもつ、またもつべき普通の知識・意見や判断力。common senseの訳語。(大辞泉)

「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉があるように、その時代、時代で常識は変わる。だから、「今」の常識で「過去」のことを断じてはならない、というのは、あらゆる物事に接するときのごくごく基本的な態度となる。

平成30年。節目の年である。多くのメディアで「30年を振り返る」という特集をしている。あれこれ見ているうちに、「あまり変わっていない」と思っていた「常識」が、この30年で大きく変わっていることに気づかされた。思いつくまま、「30年の変わりよう」を綴ってみたいと思う。

〇駅の改札口
首都圏では自動改札機が普及しておらず、まだまだ駅員による入鋏(にゅうきょう)が一般的だった。途中から「日付スタンプ式」に変わったが、技術進歩と合理化で自動化が一気に進んだ。その後、「Suica」「PASMO」などの非接触式ICデバイスが主流になった。

〇エキナカ
かつては「キオスク」「駅そば」、あとはせいぜいミルクスタンドや軽食喫茶くらいのものだった駅の売店・店舗だが、今や「本屋さん」から「病院・薬局」「眼鏡屋さん」まで駅の中で必要なものが何でも揃うようになった。

〇駅のトイレ
当時、駅にはトイレットペーパーが常備されておらず、自販機で事前購入するのが普通だった。空調もなく、どこか薄暗い空間であった。今やトイレットペーパーは当たり前、空調にBGMも当たり前、そしてベビーベッドから赤ちゃん用の調乳器までそろった「ベビー休憩室」が備え付けられているのもまた、ごく一般的になってきた。

〇駅の時刻案内
改札やホームは、「パタパタ式」がまだまだ主流であった。「今度の電車は〇〇をでました」という行灯式の単純な表示器も現役の時代。今やLEDを超えてLCD(ディスプレイ式表示)も普通になっている。

〇電車の中の案内
はじめて乗る電車では、車掌さんの鼻がかかったアナウンスを聞き漏らすまいと必死に耳をそばだてる必要があった。今は自動音声で標準化が図られている。またドア上部のディスプレイ標示が一般的になっていて、「次はどこなのか」をいつでも把握できる環境になった。ディスプレイ表示も、最近ではLCD化がどんどん進んでいる。
(当時は山手線にだけ小さな液晶ディスプレイが付き始めたばかり。東京に行って最もびっくりしたことの1つが「山手線にテレビがついている」光景だったことを今でも思い出す)。

〇クルマ
法的にはシートベルト着用義務化、飲酒運転厳罰化。安全装置的にはABS、エアバッグ自動追突防止装置、パーキングアシスト、車線維持装置、車間距離維持装置、ドライブレコーダー。機能的にはパワーウィンドウカーナビゲーション。技術的にはハイブリッド、電気自動車、自動運転。技術の進歩は凄まじい。この30年で急速に「クルマの安全化・進化」が図られてきたことが分かる。
車と言えば、横断歩道のデザインが「梯子型」から「棒線型」になったのも印象深い(雨天時の水溜まりによるスリップ防止のためと聞く)。

〇個人情報
「製造物責任」「個人情報保護」「コンプライアンス」あたりの言葉は、平成中期からの流行である。最も大きいのが「宅配便は、留守時に隣宅に預ける」というやつ。隣の家が「キョロちゃんのおもちゃの缶詰」を当てて、それがうらやましくて仕方なかったことを今でも思い出す。今思えば大胆な時代だが、当時はそれが普通だったのである。卒業アルバムに全員の住所が乗っていたり、雑誌にも普通に誰かの住所が掲載されていたり(文通コーナーや作者の住所など)、なんというか、牧歌的な時代であった。

〇バーコード
当時はまだ、バーコードの移行期。コンビニですら、手打ちのレジがまだまだ現役であった。今や2次元バーコード(QRコード)、そしてICタグ・・と、商品管理の分野でもICT化が劇的な進化を遂げている。

〇パソコン
まだまだワープロの時代。PCと言えばNECのPC9800シリーズで、「PC/AT互換機」が主流になるとはまだ誰も想像も付かなかった。Windowsが一般に認知されていない時代である。

〇インターネット
パソコン通信の時代。Windows95が開拓した「インターネットの大衆化」により、ナローバンド時代が幕開け。当時はテレホーダイなしのインターネットは考えられなかった。インターネットと言えば「真夜中につなぐもの」だったのである。その後あっという間にブロードバンド時代が幕開け。ISDN、ADSL、光ファイバ、無線LAN、Wifi・・・と、大衆が享受できる技術は格段に進化していくのであった。

〇通販
通販と言えば、昔はテレビショッピング、カタログショッピング。今やAmazon、ヨドバシドットコム、「eコマース」まで話を広げれば「ヤフオク」「メルカリ」と個人売買も盛んに。ネットスーパーも盛況である。これを支えているのが宅配業。もはや立派なインフラだ。新築住宅には宅配ボックスの設置義務化・・みたいなことが必要な時代が来るのではないか。ドローン宅配なども現実味を帯びてきた。

〇パスワード
キャッシュカードの暗証番号は数字4桁・・・それに比べると、今の様々な認証の複雑さといったら!パスワードはもはや古く、指紋認証や虹彩認証、顔認証、声紋認証・・・「生体認証」の時代がいつの間にか訪れている。

〇テレビ
そもそも、今よりも「家族みんなで」見るものだった印象が強い。正方形(SD画質)のブラウン管は「お茶の間の主役」であった。今やアナログ放送は停波し、デジタル時代。テレビはどんどん薄くなり、形もいつの間にか長方形(HD)に。昔の選択肢は地上波一択だったが、BS、CS、ケーブルテレビと多チャンネル化も劇的に進んだ。

〇電話
平成初期、自宅ではまだ黒電話を使用していた。それがプッシュホンになり、FAXつきになり、便利な「子機」が使えるようになり・・・気づけば、「1人1台」電話を持つ時代に変わっていった。
当然、「1人1台」になったことで至る所にあった「公衆電話」が激減。「10円を気にしなくて済む」という点で画期的だった「テレホンカード」も、もはや全く見ることがなくなった。

〇携帯電話
ポケベル、PHSを経て、携帯電話時代へ。「10ケタ」から「11ケタ」に番号が増えたことは、記憶に新しい。白黒画面でも「メールが打てる」ことに興奮。「着信メロディ」も「ジリリリリン」「プルルルル」という呼び出し音しか知らなかった身には衝撃であった。そして「写メール」。「写真を身近な人にいつでも送れる」のは衝撃であった。
極めつけはiPhoneが起こした「スマホ革命」。「携帯でなんでもできる」というコンセプト自体はdocomoの「iモード」に一日の長があったわけだが、しかしこの黒船は「タッチ式の板」という電話の常識を根底から覆すほどのインパクトある外観で大衆に「新しい何か」という希望を与え、市場のガリバーになったのである。

〇ビデオ
録画やレンタルビデオはVHS、撮影は8mm、そんな時代である。ダビングを繰り返すと画質が大荒れしたのもいい思い出である。そうそう、「巻き戻し」という言葉は今は公式には使わないそうで、AV機器メーカーは「早戻し」と称するそうな。DVDやBDといったデジタルの光ディスク時代から、今やオンデマンド配信、それもストリーミング再生が中心で、ネットワーク上で完結するようになってきた。すなわち「コンテンツ」を<所有する>時代から<閲覧権を取得する>時代になったということだ。仮にコンテンツを保存したとしても、その保存先はHDDやSD、SSDが主流で、すっかり「ディスクレス」時代が到来している。

〇音楽
CDの普及が進んでいたが、家にはレコードプレーヤーが普通にあった。雑誌の付録にソノシート(ペラッペラのレコード)がついていて、それを聞いていたような時代(レコードはメディアとしては相当にコモディティ化が進んでいたのだな、と今にして思う)。
録音はテープ(カセットテープ)と相場が決まっていた。絡まった磁気テープをボールペンでグリグリ・・なんて、今の子どもにはわからないだろうな。その後MDなどの新規格が過渡期として登場するが、iPod/iTunesの登場を契機にこちらもデジタル配信が主流に。上記に記載の通り、コンテンツを所有する時代から視聴権を取得する時代に大きく変わってきている。

〇映画
当時、映画館は自由席制で、上映中の途中入場・退場も普通にできたし、その気になれば1日中居たってかまわない、そんな自由な空間であった。人気作品ともなると立ち見が普通だったので、「最初から座って見たい」と思ったら、1つ前の上映時間の後半から劇場に入り、エンドロールの入れ替え(だいたいの人は、席を立つ)のときに席を取る・・なんてこともそれこそ普通にやっていた。
それが今は「シネコン型」全盛に。「指定席制」かつ「入れ替え制」がすっかり当たり前になっている。

〇照明
白熱電球から蛍光灯へ、そしてLEDへ。ここまで「イルミネーション」がブームになったのも、LEDが急速に普及したからにほかならない。
家庭はもちろん、コンビニをはじめとする商店でも、そして駅から信号機に至るまで、ありとあらゆる場所で「長寿命・省エネ」のLEDは大活躍である。
LED化により、コンビニなどでは夜に虫が来なくなる(LEDの波長は虫が捉えにくい)ことで殺虫灯(青いバチバチするランプ)が不要になるという副次効果まで生まれている。一方で豪雪地帯では信号機がLED化されたことで雪が溶けず、信号が判別不能になるという外部不経済が発生しているという。なかなかすべてはうまくいかないものね。
蛍光灯は蛍光灯で、昔はもっと点くまでに時間がかかっていた(→ラピッドスタート型が普及)し、もっとチカチカして頭痛がした(→インバーター型が普及)ような気がする。本当に技術の進歩はすごい。

〇「嫌煙」
タバコは、昔は駅のホームでも、特急や飛行機の中でも、自由に吸えた。街中などは言わずもがなである。その後、急激に「分煙化」が進み、今や(特に健康増進法の施行を契機として)「嫌煙」に近いレベルでの喫煙者排撃が進んでいる(自治体レベルで見れば、歩きタバコも条例でどんどん禁止されている)。私は非喫煙者だが、客観的に見て、ドラスティックすぎるくらいドラスティックだとは思う。
「健康への害」そして「社会損失」という観点でタバコだけを規制するのであれば、実際は「お酒の飲みすぎ」「過重労働のさせ過ぎ」あたりも十分、規制するに値すると思うのだが、そうはならないところが不思議だ。
同じ「煙」という観点では、「学校からの焼却炉の消滅」も同じくらい過激であった。ダイオキシン騒動が契機であるが、日本中のすべての学校から一斉に「焼却炉」が消えたのである。これまた、どうもまあ何と極端なことよ、と私は感じたのである。こういう「一気呵成」な感じ、戦前の「欲しがりません勝つまでは」と一緒じゃないの?
付記すると、煙の出ない「電子タバコ」の普及も、平成初期からは想像の付かないテクノロジーの1つである。

〇飲料
缶の蓋がプルタブ式であった。いつの間にか、あっという間にプルトップ式に。スチール缶よりもアルミ缶の割合が圧倒的に増えたのも印象深い。
今ほどペットボトルは普及しておらず、1.5lばかりであった記憶がある。持ち運びのしやすい500ml、さらに手になじむ350ml以下などの登場は平成も中期になってからだ。今や「ホット専用」「ワイン用」「蓋がくっついたボトル」など、驚くべき進化を遂げている。

〇ゲーム機
当時は「スーパーファミコン」前夜、ファミコンの爛熟期であった。そんな中、「ゲームボーイ」が登場。白黒画面ながら夢はいっぱい。マリオランドやテトリスは、GBを購入した層は誰でもプレイしたのではなかろうか。
この当時誰が「手のひらで裸眼3Dを楽しめる」(3DS)、「高画質のフルHD画質をどこでも持ち運べる」(Switch)ことを想像できただろうか。

〇ロボット、AIの深化とICT技術の普及
AIBOASIMOPepperをはじめとする「愛玩型ロボット」の登場は、平成の一大トピックである。「鉄腕アトム」「ドラえもん」を生み出した日本ならではと言えようか(お店にふらっと立ち寄ると、ロボットが挨拶して出迎えるという光景は特段、特異なものではなくなっている)。
AI人工知能)はディープラーニングと結びつき、「自律学習」が進むレベルにまで至っている。実用化は次年代となろうが、その進化は「キャプテンシステム」で驚いていた平成初期とは比べるべくもない。
自動音声技術」も、登場初期と比べて著しい向上を見せている。近しい例は駅の案内アナウンス。どんどん自動音声化が進んでいる。

〇物価

カテゴリ 1989(平成元)年 2017(平成29)年 備考
日経平均株価(年末) 38,915.87円 22,764.94円  
大卒初任給 160,900円 206,100円  
最低時給(東京都) 525円 958円  

タクシー初乗り運賃
(東京23区)

430円(2km)
+80円/370m
730円(2km)
※410円(1.052km)
+ 80円/237m
早朝深夜の割増運賃(10%)は平成2年から導入。
短距離の初乗り運賃は昭和54年頃の水準(380円)にまで値下がりした。
官製はがき 41円 62円 郵便番号は平成10年に「7ケタ」化。
NTT市内通話料金 10円 8.5円 3分当たり。
JR山手線初乗り運賃 130円 140円(IC:133円) 現金とICの二重料金制。
東京地下鉄初乗り運賃 140円 170円(IC:165円) 平成16年に営団は民営化。

公開:2018年1月28日

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