2010/03/07公開の記事。
人間観察はすごく楽しい。
「この人、何のために働いているんだろう?」と、色々な人をウォッチングすると、
大体こういう風になる。
1、「上司のために働くことが生きがい」(ヒラメタイプ)
2、「客(や周囲)のために働くことが生きがい」(熱血漢タイプ)
3、「自分のスキルアップのために働くことが生きがい」(自分中心タイプ)
4、「とりあえず生活のために働くことが生きがい」(会社依存タイプ)
以下、形態別見分け方。
1、ヒラメタイプ
会社の方針が変わると、人が変ったようにそれに合わせることができる。「会議での報告」のための仕事が第一で、基本的に現場レベルで何が起こっているかは興味がない。したがって下からの評判は最低。上役にとっては使いやすいが、信用はされていない。
(メリット)ワンマン上司に傍に置いておかれやすい。
(デメリット)何ら発展的な提案もできないので、「組織病」を招きやすい。
(性格)何事も「自分中心」で、「自己愛」が強く、驚くほど「プラス思考」。
(思考回路)手柄はすべて自分のもの、ミスはすべて部下のせい。
(判断基準)「会社(本社)がどう思うか」
(私はこの判断基準を、「会社隷属病」と名付ける)
(飲み会)自分の過去の武勇伝や自慢話を好む。
(口癖)「昔の部署で俺は」「俺が若いころは」「会社の方針では」
(好きなもの)社長、上司、肩書き、偉人伝、名言集
(嫌いなもの)実用書、現場、自分の意にそぐわない部下
(得意なこと)揉め事をなあなあで調整すること、会社の方針に合わせて行動すること、情報の隠蔽
(苦手なこと)自分の意見をストレートに表現すること、不都合な点を上に報告すること
(具体例)「上ばかり見て仕事をしてきた。気づけば、慕ってくれる部下もいない。今の社内での立場も、結局微妙。老後のビジョンも立たない。今はただ、会社が定年後も潰れないでいてくれることを願うだけ」(56歳・男性)
(解説)どの会社にも必ず存在するのがこのヒラメタイプ。組織である以上、誰にでもヒラメ的要素は必要だが、「理事長に取りつく悪徳教頭」、あるいは「ジャイアンをヨイショするスネ夫」タイプになってしまったら終わりだ。リーダーはそういう部下を置いておいたほうが精神衛生上気持ちのいいものだが、そんな奴ばかりの組織なんて絶対に崩壊する。会社に勤めていて空しいところは、社長(あるいはもっと下の上司でもいいが)が変わると組織の方針なんてコロコロと変わってしまうところだ。ヒラメでいたって何の楽しいこともないと思う。大事なのは自分にとって「こう」だという判断軸を持つことだろう。
2、熱血漢タイプ
顧客満足が仕事の意義だと感じている熱血漢タイプ。がんばり屋が多いが、その方向が組織全体の意志とは微妙にずれていると、チームで仕事をするときには弊害となる。上司とぶつかることが日常茶飯事だが、現場受けは総じていい。上役にとっては使いにくいことこの上ないが、信用はされていることが多い。
(メリット)その熱心さが顧客には受ける。その能力ゆえ、個人的なコネが生まれやすい。
(デメリット)社内でのチームワークに難。仕事を抱え込みやすく、過労気味に。
(性格)基本的に「他者愛」があり、自分の信念に対しては「頑固」で、何事にも「熱心」。
(思考回路)他人のミスに厳しい。
(判断基準)「自分の常識」で判断してしまうことが多い。
(私はこの判断基準を、「自分の常識は世間の非常識かもしれないと疑えない症候群」と名付ける)
(飲み会)寡黙か陽気かの両極端。
(口癖)「こんなに頑張っているのに」「給料が安い」「自分で(が)やるしかない」「○○すべき」
(好きなもの)現場、タバコ
(嫌いなもの)会社、上司、肩書き
(得意なこと)頑張ること、意見をストレートにいうこと、報告・連絡・相談
(苦手なこと)仕事の質・量にメリハリをつけること、他人の都合を考えて仕事をすること
(具体例)「俺はこんなに頑張っているのに、会社は何をしているんだろう。同僚も頼りになりゃしない。全部自分がやらなくては。どうも頭痛が続くが、俺がやらなきゃ誰がやる。そういえば最近、子どもは寝顔しか見ていない」(36歳・男性)
(解説)頑張り屋さんはいつも無害かというと、実はそうでもない。頑張る方向が異なっていれば、それは「ありがた迷惑」という言葉もあるように、ただの害悪なのだ。自分の判断軸があるという意味ではヒラメタイプと比べて「人間的には」よほど信頼が置けるが、「組織的には」いつもウェルカムというわけではない。このタイプはえてして狭量なことが多い。自分の判断軸プラス、「相手の判断軸」も考えて行動できるようにしたい。
3、自分中心タイプ
若い社員に多いタイプ。上司が「この会社の将来のために」とハッパを掛けても、「は?アンタの老後のためだろ?」と冷めている。本心では安定雇用を望んでいるが、基本的に国も会社も信用していない。そこで現在の会社の制度(や、自分の置かれた立場)をとことん利用して、自分のスキルを高めることに主眼を置く。基本的能力は高いので仕事はできるが、好きな仕事しかしないことが次第に周囲にバレるので、現場受けは微妙。上役とはうわべだが「うまく」つきあうので、そこそこ信用される傾向にある。
(メリット)会社の目指す方向と個人的志向が合致した時に、爆発的な推進力が生まれる。
(デメリット)旧来の組織論や精神論ではまったく心を動かせないので、扱いが難しい。
(性格)幼児的な「自己万能感」があり、他者には「疑心暗鬼」、特定の物事に「傾倒的」。
(思考回路)誰かにあれこれ指図されることが大嫌い。失敗を極度に恐れる。
(判断基準)自分とその「仲間」が不快になることを極端に嫌う。自分とその仲間を不快にする存在を「敵」とみなす。
(私はこの判断基準を、「女子校グループシンドローム」と名付けよう)
(飲み会)意外だが、仕切れるタイプが多い。要は、あれこれ指図されるなら自分からやったほうがラク、ということだ。
(口癖)特になし
(好きなもの)自分と、家族・友人・恋人・同期を含めた仲間たち、趣味
(嫌いなもの)自分やその仲間を不快にする存在すべて
(得意なこと)指示通りに動くこと、仲間を守ること
(苦手なこと)自分から仕事を「創る」こと
(具体例)「会社に長くいる気はないけれど、チャンスがなければ別にいてもいい。だから、言われたことはこなすけど、自分から進んで仕事を作るつもりもない。やる気がないのではなく、やらないだけ。最近、先輩の目線がどんどんキツくなっているみたい。ムカつく。やることやってるのに」(28歳・女性)
(解説)若い社員はこのタイプが多い。将来に不安がある中で、生存本能が働いた結果だろう。ただ、その本能は相当劣化しており、「スキルを身につけて、やがて独立」という野心家タイプというよりは、「やることはやるが、いやになったら辞める」という消極的タイプがほとんど。こういうのを昔は「やる気がない」といったものだが。とはいえ能力が低いわけではないので、言われたことはそれなりにこなす。しかし、自分から何かをやろう、という積極的姿勢がまったく見えないので、とかく年長者はその態度に「ムカつく」。辞めることには抵抗がなく、やる気がない(ように見える)ことを叱りつけると、やがて本当に辞めてしまう。21世紀型新人類。対処法は「理解すること」。
4、会社依存タイプ
仕事に対する熱意はなく、基本的に今の生活水準を維持することに主眼を置く。そこそこ真面目に働いて、そこそこで終える。ワークスタイルは「毎日定時帰り」のタイプと、「毎日ダラダラ残業(生活費稼ぎ)」のタイプに分かれる。有給はキチッと消化するのも特徴。現場からは可もなく不可もない評価。上役に逆らうこともないので評価も普通。
(メリット)可もなく不可もないこと。ゆえに、事故発生確率がきわめて低いこと。
(デメリット)彼ら・彼女らには何らの価値創造も求められない点。また合成の誤謬で組織全体では非効率になり得ること。
(性格)基本的に「自己保全」本能が強く、自分のことに「執着」し、かなり「不安症」である。
(思考回路)「自分が大事」で、他者には基本的にまったく興味がない。
(判断基準)すべてにおいて自分に何かが降りかかることを極度に恐れる傾向にある。他者はどんな目にあっても平気である。
(私はこの判断基準を、「強迫症的自己保全症候群」と呼ぶ)
(飲み会)面倒くさいので、参加しないタイプが多い。当日のドタキャンもしばしば。参加したとしても1次会のみとか。幹事経験はほとんどなし。
(口癖)「今度の休みは」「昼休みは」「今日の帰りは」「昨日の夜は」
(好きなもの)自分自身とその周囲、お金、休み、安定した身分
(嫌いなもの)自分に降りかかってくるすべての災厄、自分を不利な立場に置く上司・同僚
(得意なこと)忙しいフリをすること、人に仕事を振ること
(苦手なこと)人の仕事を代わりにやってあげること、自分が不利になる報告をすること
(具体例)「腰かけのつもりが、意外と給料がよくって結局会社に残ってしまったわ。適当に残業して、休みたいときに有給とって。マンションも買えたしね。もう20年近く同じような作業をしていたら、さすがに何でも流しでできてしまうわよね。あとは会社がつぶれなければいいんだけど。今日は疲れたわぁ。定時で帰ろうかしら。銀行に寄ろうっと。」(41歳・女性)
(解説)ある意味でもう会社に(も自分にも)何も期待していない人たち。職場のモチベーション低下の元凶ともいえる。「大企業病」「ぬるま湯病」とも言える。社会が成長を止めた90年代に考えられた治療方法は、徹底した成果主義の導入やリストラといった「荒療治」であった。が、そういうことをすると、優秀な人から会社に見切りをつけ、最後まで会社に残るのは、・・・実はこういう人種だけ・・という結果に終わることに。このタイプは、決定的に悪くないだけに、じつは一番タチが悪い、治りにくい風邪のようなものかもしれない。
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ヒラメタイプばかりでは組織は不祥事の嵐。
熱血漢タイプばかりでは組織は個人技で崩壊。
自分中心タイプばかりでは組織は前に進まなくなる。
会社依存タイプばかりでは組織はいずれコスト高で破産する。
逆にいえば、
ヒラメタイプがいなければ組織は回せない。
熱血漢タイプがいなければ組織は凍りつく。
自分中心タイプがいなければ組織は老化する。
会社依存タイプがいなければ組織は事故を起こす。
・・・結局この4タイプ、すべて必要なのだろう。
公開開始:2011年6月27日