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■不妊治療・・・導き出された、ある夫婦のシンプルな答え。
チャンスは年に12回。だから、ただちに現代医学に頼る。そして、自分たちを責めない。

■自己紹介

・ 30代を過ぎていた私たち夫婦は、2016年12月に不妊治療(体外受精)で第一子(女児)を授かりました。

■経過

2014年
・ 妻、重い生理痛(嘔吐や激しい腹痛を伴う)に毎月悩まされるようになる。

2014年10月
・ 妻、会社の婦人科検診で卵巣腫瘍と診断される。就業ストレスが主因と思われる。
・ 通院したレディースクリニックで、子宮内膜症(チョコレート膿疱)と診断される。
・ 膿疱は左右ともに7×8cmと巨大化しており、手術を勧奨されて大学病院を紹介される。
・ 大学病院では、「手術をすると、卵巣機能を低下させて妊娠能を削ぐ可能性がある」との診断。
・ いったん、ホルモン治療(ナサニール)で生理を止め、経過観察となる。

2015年4月
・ 半年の生理ストップにより、腫瘍が半分程度の大きさにまで良化。
・ とはいえ子宮内膜症が重いことには変わりはなく、本格的な不妊治療へ移行。

2015年5月
・ 不妊検査の結果、「AMH」(敢えて平たく言えば、卵子の予備値)が年齢比で低下していることが判明。
・ 一方、子宮卵管造影検査には異常がなく、夫の精子検査も問題なしのため妊娠能そのものに影響がないことも判明する。
・ 医師は「卵巣機能を弱めるリスク」から、手術の前にまずタイミング法での自然妊娠を提案。ここからタイミング法を開始

2015年7月
・ タイミング法と並行して漢方薬の服用を開始(当帰芍薬散)。

2015年8月
・ 鍼・灸の通院開始。
・「黄体期」が若干短いため、血液検査を行う。
・ 卵胞ホルモン「E2」の値が基準より低位であったため、翌月から排卵誘発剤を併用することに。
・タイミング法も4回目を数えることから、翌月から人工授精の併用を行うことになる。

2015年9月
・ 排卵誘発剤「セキソビット」使用、人工授精1回目を実施。

2015年10月
・ 「セキソビット」使用。タイミング法6回目を実施。体外受精への移行を提案される。
・ ただし、この病院(大学病院)は産婦人科医であって不妊治療専門の病院ではないこともあり、単一の療法(刺激法※)しか扱っていなかったことから、セカンドオピニオンとして、著書のある某医師の産婦人科のカウンセリングを受けることとした。

※採卵には卵巣刺激の薬剤を使用しない自然周期採卵と排卵誘発剤を使用する刺激周期採卵とがあり、どの治療法を採用するかを専門医に診断していただいてから適切な療法を選択する必要性を夫婦で感じていた。

→セカンドオピニオンでは、「まだ体外受精は早い(年齢的にもう少し様子を見てみてはどうか)」という結論だったが、「タイミング法」に頼る現状が続くのは、夫婦の精神力の限界に達していた。

2015年12月
私たちに必要なのは体外受精であると決意し、セカンドオピニオンの医師に紹介状を依頼して、不妊治療専門のクリニックを受診する。
→ここで、本格的に「体外受精」へ舵をきることになる。 結果的に、「自然周期採卵」での体外受精を試みることになった。

2016年2月
・ 体外受精1回目 → 縁なし

2016年3月
体外受精2回目 → 妊娠

2016年5月
悪阻(つわり)が酷くなる。
・ 吐き悪阻が快方に向かっても、妊娠後期まで毎分数回レベルのひどい「げっぷ」の症状が続く。

2016年10月
切迫早産MFICU(母体胎児集中治療室)へ救急搬送。3週間の入院。

2016年12月
・身長50cm、体重2888gで無事、娘を出産
・出産翌日頃から、娘の嘔吐が酷くNICU(新生児集中治療室)へ入院
・ 状回復せず、大学病院へ救急搬送。体重は2100g台へ落ちる。
・ある日突然症状が回復し、退院。

2018年12月
・以後、目立った異常なく無事に2歳を迎える。身長88cm、体重10kg。

■私たち夫婦が不妊治療で得た3つの結論。

1、「最短時間で最大効果」を最初から取りに行く

産婦人科での子宮内膜症の治療からスタートして、少し回り道をしてしまった私たち。不妊治療に限れば、最初から不妊治療専門の病院で本格的な治療をスタートするのがよかったと今にして思います。

私たちのケースでいえば、子宮内膜症が落ち着いた段階で、タイミング法を数回試しても効果がなさそうであれば、躊躇せずに体外受精に移行するのが最適解だった、ということです。何か月やっても結果が出ない場合は、より結果の出得る方法(体外受精、顕微受精)に意を決してトライしてみるというのが、よりよい選択肢の1つであろうと思います。                          

妊娠のチャンスは、1か月に1回、1年で12回「しか」ありません。「あれ?どうもおかしいぞ」と思ったら、直ちに不妊治療専門医の門をたたきましょう。「来月からでいいや」ではなく、「今月から、取り組む」ことが重要です。

「いつかできる」の「いつか」がなかなか来ないとき、こちらからその「いつか」をつかみ取るべき瞬間があるのかもしれません。「体外受精」という言葉には、怖さや躊躇があったのは事実です。「自然妊娠」と「人工妊娠」の間の微妙な心の壁もありました。しかし、「1年」という時間は貴重です。何より夫婦が、精神的に著しく疲弊します。

意を決して、早めに「最短時間で最大効果」を取りに行くことが何より重要と、私たちには思えてなりません。

2、現代医学に頼る

世の常ですが、「不安」は商売のタネです。夫婦の精神状態をボロボロにする不妊治療は、「不安商法」の絶好のターゲット。

すべてが詐欺とは言いませんし、個人差があるとはいえ、中には本当に効果のある民間療法もあるのでしょう。精神の乱れはホルモンバランスの乱れにも直結しますから、「取り敢えず安心を買う」ことで、たとえそれが気休めであったとしても結果的には役に立った、というものもいろいろあるのでしょう。ここで特定のものを「これは効果があった、なかった」と論ずるのは、結局不安商法の亜流ですからここでは避けることとします。

ただし、「科学的に根拠のある治療法は現代医学である」ことだけは忘れないようにしておきたいものです。100の民間療法より、1の現代医学。最初から不妊治療専門の高度な医療を受けること。シンプルですが、それが一番「近道」です。

3、自分たちを責めない

不妊治療を決断するまでに、すでに長い道のりが夫婦を襲います。すなわち、「なんだかおかしいぞ」という疑惑の道のりです。それを乗り越えて、ようやく不妊治療の扉をたたいても、そこからが勝負。「タイミング法」だの、「人工授精」だの、「体外受精」だの、「顕微授精」だの・・・・より長い道のりが待っています。

その過程で、夫婦は話し合うことになります。これからの道を。費用だって掛かります。時間だって使います。間違いなく、1度となく喧嘩をすることになるでしょう。妻は、自分が悪いわけでは全くないのに、自分を責めるようになります。ここが勝負どころ。

自分を責めないこと。これが、諦めないで治療を続けるためのキーワード。繰り返します。妻も、夫も何も悪くないのです。自分たちを責めないこと。

「あのときこうしておけばよかった」「もっと早く治療を開始しておけば」と、悔やむこともあるでしょう。責めることもあるでしょう。しかし、責めても何もはじまりません。第一、ホルモンバランスに影響します。そうではなくて、「今から何をすればよいか」に目を向けていくのです。

するとシンプルに、「不妊治療専門の、高度な医療を受ける」という答えが浮かび上がってきます。専門の高度な医療を受けることが、自分たちを責めたり、エビデンスの不明な民間療法を100受けたりするよりは、成功の確率の高い最適解であることに気づくことができるのです。私たちが、そうでした。

■時間とお金

不妊治療に、必ずかかるものがあります。それが時間とお金です。

1.時間

不妊治療継続のネックは、「時間がとにかくかかること」です。理論上、1か月に1回(1年間で12回)×治療法ごとの必要日数分の日程を治療に充てる必要があります。男性は採精程度の手間で済みますが、「母体」たる女性はそうはいきません。本格的な治療を行おうとすればするほど、取られる時間は大きくなっていきます。

仕事をしている場合(そしてそういう方がほとんどの今)、その仕事をどうするか。必ずぶち当たる難問です。ここは職場の上司とも相談して、有給も活用しながら最優先で不妊治療に時間を充てることがどうしても必要です。

もう少し理想を言えば、長期休暇をしてリラックスしている状態で不妊治療を受けたいところです。「ストレス過多」の状態ではどうしてもホルモンバランスも乱れてしまい、治療効果を減ずる可能性があるからです。実は「身体を休ませて、ホルモンバランスを整えたうえで不妊治療に臨むこと」が不妊治療において大事なこの1つなのです。・・・そううまくいくわけがないことは、当たり前ですが私たちも分かっています。

「子どもを持つために全精力を注ぐ」ことを周囲の理解を得ながら進めていくという荒業が必要なのは、残念ながら厳然たる事実です。不妊治療の苦しさと夫婦の精神的疲弊を(実体験として)理解している人は当然ながら社会のマジョリティではありません。

ただ、 「働き方改革」「ワークライフバランス」の大合唱の今は社会的認識を変えていくチャンスの時期でもあります。だからこそ、謙虚に、しかし堂々と、「不妊治療で休む」ことを伝え続けていかなければ、今後も何も変わりません。これを経験した側が、(夫側も含めて)将来の同様の人たちのための力になることが、少しでも「不妊治療」とそれに係る時間的負担、金銭的負担、精神的負担、肉体的負担に対しての、社会的理解を得ていくための礎になるのだと思います。

2.お金

不妊治療継続のネックは、もう1つ、「お金がべらぼうにかかること」です。今は地方公共団体の助成金制度も充実していますので、必ず事前に調べてから通院を開始するようにしたいものです。

こればかりは、「蓄財(夫婦の貯金)」と「予算化(この金額まで使えるという上限管理)」の2つで対応せざるを得ないわけですが、限りある財産を使って治療を行う以上、私たちが何度も書いているように、「最少時間で最大効果」を狙っていくことが極めて重要になってきます。

最初の産婦人科の医師は、30代前半(当時)の妻に対して、「まだ若いので、タイミング法で行きましょう」と言って、 なかなか「体外受精」という本丸に切り込めぬままでいました。結果的にサードオピニオンとなった不妊治療専門医の体外受精で妊娠につなげたわけですが、この「まだ若い」という判断で2年、3年と同じ治療を継続していた場合は、結果を出せなかった可能性もあります(あくまでifの話ですが)。

効果が見られない場合、より高次の治療に早めに切り替えていくという選択肢は必要なことだと感じました。「まだ若いから」という理由でローリスク(つまりローリターンでもある)の治療を継続し、結果的に「長引く不妊治療、疲弊する夫婦」を生み出しているとしたら、これは恐ろしいことです。

<余談>
不妊治療における「若い」の定義について

不妊治療当初、妻がよく言われたのが「まだ若いので」というフレーズでした。夫が言うのもなんですが、妻は実際見た目からして若いですし、不妊治療の世界からしても、確かに30代前半の妻が若かったのは事実です。

平均初婚年齢が30代に差し掛かった現在、確かに30代での自然妊娠は一般的な事象と言えます。しかし、現実として、妊娠年齢としての30代は生物学的には決して「若くない」はずです。ここを大っぴらにいうと、ポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい)全盛の息苦しい世の中で社会的に抹殺されるので、誰も言わないだけです。 もう一度言います。ポリコレ社会では本音は誰も言わなくなります。外に出くるキレイゴトで判断していると、間違いなく判断ミス をします。

要は、昔は普通に「高齢出産」と呼んでいた年齢が、今は普通の出産年齢になっているわけです。本来は、「妊娠年齢としては高くなっているから、早めに高度な治療を受けましょう」とはっきり言うべきではないか、と私などは今回の辛く、苦しい経験を通じて強く思ったわけです。しかし、公になる言葉というのは、批判を恐れてか(まあ、怒る人はいるでしょうね)、「まだ若い」「まだ大丈夫」という甘い言葉ばかりなのです。ゆえに、まずはどうしてもローリスク(つまりローリターン)な治療から入っていきやすいのだと思います。普通に「妊娠年齢が高いこと」を伝え、すぐに高度医療に切り替えていくほうが、「長引く治療、疲弊する夫婦」を生み出さないのではないか、と思うのですが・・・。 経験者として、私はあえて書きます。「30代になったら、高齢」です。だから、すぐに高度な医療に移行するべきです。

これは余談ですが、一般的に、「言われなくなったら終わり」「怒られなくなったら終わり」ということがあります。

この文脈で敢えて書きましょう。晩婚化・非婚化(結果的に少子化)の要因の1つは、ポリコレ化が進み、誰も「結婚しなさい」と言わなくなった、ということが大いに関係しているように感じます(結婚の「個人化」が進めば進むほど、第三者が結婚について世話を焼いてくれなくなるから当然です)。

「空気を読む社会」「ムラ社会」の日本においては、昔は「ハイミス」「行き遅れ」「高望み」「結婚しなさい」と直截・間接の社会的圧力が結婚を後押ししていた部分があったように思います。それを誰もが(親ですらも)ホンネを堂々と言ってはならなくなった言葉狩り社会の到来で、「もうあなたは十分年をとってしまったよ」と誰も言ってくれなくなったのです。これ は、「言われなくなったら終わり」の典型例だと思うのです。「裸の王様」というやつです。

個人の権利が100%尊重される社会は、個人の責任が100%問われる厳しい社会でもあることを、私たちは再認識すべきなのです。個人はほんらい、弱い存在です。社会制度によって強く見せかけているだけです。すぐに安きに流れます。本当は少しくらい、 もしかすると「王様は裸だ」と言ってくれる人がいたほうがよいのかもしれません。過度な忖度はミスリードの源であり、ミスリードは破滅の種です。

話を元に戻します。この「不妊治療」にあっては、「30代を過ぎたら、妊娠年齢は決して若くない。少しでも不安要素があれば、妊娠の確率を高めるために、ただちに高度医療へ移行したほうがよい」というホンネを、誰かが声を上げて言っていかねばなりません(だから、 しっかりとここで書きました。事実は事実として受け止め、「ではどうするか」を考えるのが、とるべき態度だと思うからです)。

■結論

経験者の私たちはこう主張します。不妊治療にはお金がかかります。時間もかかります。だからこそ、「早めに動く」ことが大切なのです。少しでもおかしいと感じたら、「今すぐ、高度な専門医療に取り掛かる」ことが必要なのです、と。


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