うまいはなしはないよ
基本的に、「おいしい話はない」ということを心得ておくことが大切です。他人は絶対に自分のために「おいしい話」を持ってきてはくれません。おいしい話に見えるのは、相手にとっておいしい話だからです。わざわざ「自分は人を騙すつもりです」といって人を騙す人はいません。この原理原則を弁えておかないといけません。
不動産投資は、素人がやるものではありません。株でもなんでもそうですが、素人に話が回ってくる頃には、プロはとっくに儲け切っています。新規参入がないと旨味が減ってしまうので、すそ野を広げようと「こっちの水は甘いよ」と誘ってくるのですね。「儲け話には、乗らない」―これが、一番大切なことなんですね。あとはまさに「自己責任」です。
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■「節税になります」
これ自体は事実です。ただ「節税になる」とは、基本的には「収支が赤字になりますよ(損をするから、節税になるよ)」ということです。それだけ「手出し」も多いということですから、年収1000万円に満たないごく普通のサラリーマンが不動産投資で「節税」の益を享受できる可能性はほとんどありません。また、そもそもその投資が黒字化すれば結局納税義務が発生してしまいます。
■「老後の年金対策になります」「保険代わりになります」
ローンを完済するころには当該の物件が「築35年以上」の築古物件になっています。余程の好立地でない限り、短期間で売却しても物件価格はまず下落していますし、保有していても修繕積立金、固定資産税など経費が嵩みます。売却するころには、売るに売れないいわゆる「負動産」化してしまうリスクもあります。
■「家賃保証があります」
最近はサブリースのことがだいぶ報道されるようになってきましたね。契約上、途中で減額される可能性があり、当初の家賃保証額を想定して長期ローンを組んでいると家計が破綻する恐れがあります。このリスクは必ず意識しておく必要があります。
■「高利回りです」
重要なのは「実質利回り」です。よく広告に表示されている表面利回りは純粋に家賃収入を物件価格で除したものですが、実質利回りはコスト(修繕積立金、管理費、固定資産税や都市計画税などのランニングコスト)を含めた総収入を、物件価格と購入時のコスト(仲介手数料、火災保険料、登記手続きの費用、住宅ローンの事務手数料や保証料、印紙税、登録免許税、不動産取得税など)で除したものです。またそもそも、「利回りが高い」というのは、(その分だけ)「価格が安い」ということでもあります。これをどう捉えるか、です。「価格が安い」のには必ず理由がありますから、その部分もしっかり見極めないとならないでしょう。
■「将来の値上がりが期待できる」
期待できるだけで、誰にも確約はなされていません。本当に値上がりする「おいしい」物件ならば、人に売らずに「自分で」購入しているはずです。
■「頭金なしで大丈夫」
仕組みとしては大丈夫なのですが、それはあくまで仕組みとしての話。「支払えなくなる」リスクは常に付きまとうと言えるでしょう。「部屋がなかなか埋まらない」「突発的な修繕費の発生」などトラブルや想定外の出費はつきものです。頭金を用意することが難しいような金銭的に余裕のない人は、そもそも投資をするべきではないでしょう(まずは強制的な貯金からです)。クルマの「残価設定ローン」もそうですが、要するに初期投資にレバレッジを利かせて「当初費用を後回しにしているだけ」ですので(クルマの場合は、想定した金額で売却できればよいが、もしクルマが傷ものになってしまった場合は支払い不能になる恐れがある)、「身の丈に合った買い物」をするという庶民の原理原則を遵守したほうがよいでしょう。
■「常に満室です」
今は満室でも、いずれ空室だらけになるかもしれません。「現況は、必ずしも将来を約束しない」ということを心得ておく必要があります。