ITパスポート試験は、「情報処理の促進に関する法律」でその実施が定められた国家試験で、情報処理技術者試験のうちもっとも入門的なレベルの試験となっています。対象者は、「情報技術に関わるすべての社会人、また関わっていこうとする人」です。IT化する社会において、「ITに関する基礎的知識がある」ことが公的に証明できます。合格率は概ね、50%前後となっています。
参考→【ITパスポート試験】情報処理推進機構(公式サイト)
上位試験となる基本情報技術者試験や応用情報技術者試験とほぼ同じ分野が出題されますが、これらの上位試験と比べると基礎的な問題が出題されます。また、情報技術者に限らずひろく社会人を対象とした試験であることから、ストラテジ(経営全般)に関する出題も比較的多く出題されています(参考→【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲に、最新のシラバスが公開されています)。
具体的な出題範囲は、以下の通りです。
以下の4つの基準を「すべて」満たすことで合格となります。1つでも条件を満たない場合は合格とはなりません。
CBT方式を採用しています。受験者は専用のコンピュータに表示された試験問題にマウスで回答します。都合の良い日時や会場を選択して、年間を通じて受験が可能です。
(参考→【ITパスポート試験】CBT疑似体験ソフトウェアで、実際の受験画面を本物の試験問題で体験できます)
受験の申し込みは、公式サイト(【ITパスポート試験】情報処理推進機構)から行います。
ITパスポート試験の特徴は、試験日の3日前まで受験日や場所を無料で変更できることです。ただし試験2日前以降は変更できず、欠席した際も受験手数料の返還はありません。
受験日を変更する場合は、「変更日の3日後~3か月後」まで変更の選択が可能です。変更回数に制限はありませんが、初回申込日から1年を超えて試験日を延長することはできません。
【▲目次へ戻る】
世の中のあらゆる人に受験資格があるITパスポート試験は、例えば学校のテストのように、「ある程度均質な母集団」を元にしたテストではありません。ですから、「○○をすれば合格!」とか、「○時間学べば大丈夫!(※)」ということは安易に言えるものではありません。このページも含め、世の情報は「引き出し」の1つとして活用し、それに搦めとられないようにしましょう。大前提として、これが何よりも重要です。
(※)例えばITパスポートの学習期間は一般に「100~150時間程度が目安」とされますが、ある程度社会人経験を積んでいる人、しばらく組織から遠ざかっていた人、学生でも自分でアプリ開発ができてしまう人、これまでのバックグラウンドによってそのレディネスは様々です。経験の有無によらず、そもそもの得意分野・苦手分野もそれぞれ異なるでしょう。したがって、「○時間勉強したら合格する」という基準のようなものは、あるようであまり当てにはならないのです。あくまで目安としては意識しつつも、自分にあった学習時間をつくって取り組むほうが賢明です。最後は「自分で考えるしかない」ということです。
「何となく受験する」と失敗しやすくなります。何故受験するのか、受験することで起こしたい状態は何か(あるいはもっと単純に、自分にとってどんなメリットがあるのか)を言語化してみるとモチベーションにもつながります。
ITパスポート試験は「いつでも受験できる」ので、「いつまでも受験しない」ことも可能です。ある意味、とても「自分次第」が問われている試験でもあります。
「150時間勉強したら受験日を決めよう」とか、「過去問で8割いけるようになったら受験しよう」と、期限を先延ばしにすると、受験する日はいつまでたってもやってこないことになります。
まずは受験日(〆切)を決めます。そして、その〆切に向けて完成させていく、という心積もりで受験しましょう。
学習のコツは、「継続すること」です。習慣化すれば、それ自体が力になるのです。そして継続するための基本は、「自分にあった学習スタイルを確立すること」です。無理は続きません。無理なく学習を習慣化させていくためには、以下のように「学習の型」を作ってしまうことです。
起床後、出勤前、出勤中、昼休み、夕食後、就寝前、休日など自分が捻出できる時間を見つけます。
隙間の5分なのか、まとめて1時間なのか。自分が取り組める量を考えます。
自分の部屋なのか、家族のいるリビングなのか。電車の中なのか、行きつけの喫茶店や図書館なのか。自分が集中して学習できる場所を考えます。
参考書や問題集をどうするか。過去問題・模擬試験はどのように解くか。過去の自分の試験との向き合い方も思い出し、自分が取り組みやすい学習方法を考えます。
学習の基本はインプット(参考書)とアウトプット(問題集)、そして実践(過去問題や模擬試験)です。参考書に求めるものは、「図解はいいから文字にしてくれ」「イラストが多いほうが好き」など、人それぞれ-千差万別でしょう。いずれも、実際に書店で手に取ってみたり、アクセスしたりして自分にあったものを使うことが重要です(人の口コミだけではなく自分自身の感覚をたよりにしましょう)。なお、ご参考までに過去問題(問題冊子・解答例)は無償公開されています。
以下は私の場合ですのであくまでも「引き出し」としてご覧ください(なお、使用した書籍名は「ステマ」ととられないために非公開とします)。
まずは参考書と問題集が一体となったタイプの書籍(項目ごとに解説付きの確認問題があり、さらに最後に模擬問題がついている)を使用し、以下のように学習しました。
次に過去問題・模擬試験に、以下のようにチャレンジしました。
学問に王道はありません。ただ、「筋の良い学習の方法」はあります。学習を効率的に行うためのポイントを挙げてみました。
設問は、用語の意味だけでなく、その背景や応用(どのように使われているか)を問うものが多用されています。単純な丸暗記だけでは通用しない部分もあるため、「他者に説明できるくらいストーリーで語れるような状態」を目指すと安心です。
試験はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系と系統ごとに出題されます。ストーリーで覚えるためにも、分野をかいつまんでバラバラに学習するのではなく、特定の分野ごとにまとめて理解するようにするとよいでしょう。
一通り参考書や問題を解いたら、過去問・模擬問題を解きましょう。傾向が読めるだけでなく、自分の理解度を確認することもできます。採点時には、必ず不正解の選択肢の解説も読み、インプットや不足している知識の補填を心がけるようにしましょう。
IT用語は英略語も非常に多い分野です。例えば「DFD」。この言葉だけを丸暗記しても、試験での応用は効きにくい可能性があります。「Data Flow Diagram」という正式名称と「データの流れを視覚的に表現する図」という日本語での意味もセットで押さえるのがよいでしょう。もう一例、「SCM」。これも、「サプライチェーンマネジメント」、すなわち「サプライチェーンを最適化する管理手法」などと覚えておくとイメージを持ちやすくなります。
確約できるものではありませんが、100問の模擬試験(本番と同じ形式で出題)において、各分野ともに80%~90%程度、総合で80%中盤程度の正答率を平均的に取れる状態に仕上がってくると、合格点が見えてくるかと思います。
できれば、過去問から組み合わせた「模擬試験」を解くことをお勧めします。過去問を繰り返し解くのもよいですが、出題の順番が同じだと、いつの間にか惰性で(機械的に、思考せずに)解答できてしまうようになってしまいますので、可能な限りランダムな出題で(せめて、選択肢はランダムな順番になるようにして)解答の訓練しておくほうが、本番で慌てにくくなります。
【▲目次へ戻る】
シラバス改訂ごとに、試験は難化傾向にあるとされています。最近の社会や技術の傾向に合わせた新出用語、また「シラバスにない用語」も出題されています。ポイントは、「丸暗記」や「間に合わせの学習」ではなく、「目的」と「実際の使われ方」をストーリーで押さえ、知識を実際の現場での使用に当てはめて考えることです(試験は明らかに、そのような目的を意図して出題されています)。
例えば「ヒートマップ」という用語だったら、単に「数値データを強弱で色分けした地図」という覚え方をするだけでなく、応用例として「企業が新規出店の市場分析をする際に、GISデータから取得した商圏の年齢別の人口密度の多寡を、町丁目ごとに色分けして表示する」というところまで描くようなイメージです。過去問題だけでなく、日常の現場(職場、学校、ニュースなど)からも、意識的に「活きた事例」を観察するとよいでしょう。
特に現状、次のような傾向が出てきているとされます。
従来の、「○○な用語はどれか?」を選択するような知識を問う問題だけでなく、より具体的な事例を用いた設問が増加しています。例えば、「暗号資産」の内容について問うた設問の選択肢には、「暗号資産の利用者は、暗号資産交換業者からの契約内容などの説明を受け、取引内容やリスク、手数料などについて把握しておくとよい」(←正答)など、単に「暗号資産」の意味を問う以上の具体的な事例を使った問題や選択肢が出されています。用語の一部を理解するだけでなく、全体像を捉えることではじめて正解できるような問題もあるため、よりストーリーでの用語把握が求められていると言えます。
単純な4択問題ではなく、選択肢の中から「当てはまるもの(当てはまらないもの)」をすべて選ぶタイプの問題も増加しています。ある用語を説明した文章a,b,cがあるとき、選択肢アがa、イがa,b,c、ウがb,c、エがc、などとされているタイプの4択です。これも、単に1つの用語を丸暗記するだけでは対応しがたく、よりストーリーでの用語把握が求められていると言えるでしょう。
試験の鉄則として、「簡単な問題では落とさない、難問では慌てない」というものがあります。難問は、普通、ここまで勉強してきた誰にとっても難問です。特に見たこともないような用語が出てくるとき、頭が真っ白になってしまうことがあります。ただこれは、「誰にとっても難しい問題」である確率が高いので、「解けたらラッキー」くらいの心積もりで臨みましょう。
これだけ変化の速い時代ですので、必ず知らないような新しいIT用語が出題されることはあり得ることです。ただ、そういう問題ほど、よく読んでみると他の選択肢は絶対にあり得ないものが雑じっていたりするものです(新しい用語なだけに、類似な用語を選択肢として用意するのも難しいと言えるでしょう)。落ち着いてみると、意外と簡単な問題(ラッキー問題)だったりすることもあるのです。
また、ITパスポートでは、そもそも「採点されない問題」が8問仕込まれています。あまりにも難しい問題は、もしかするとこの「採点されない問題」の可能性もあります。繰り返しになりますが、「簡単な問題では落とさない、難問では慌てない」ことが肝要です。
【▲目次へ戻る】