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「怒り」と巧く付き合うコツノート
0.はじめに
感情の発露たる「怒り」。怒りそのものをなくすことはできなくいても、巧く付き合うことは可能です。私が直接、所謂アンガーマネジメント領域のトレーニングを受けて学んだ「怒りとの付き合い方」を、「講義ノート形式」にまとめてみました。
目指す状態
- 「怒らない」のではなく、「後悔しない怒り方」ができるようになる(=アンガーマネジメント)
- 怒る必要のあることだけを上手に怒り、怒る必要がないことはそもそも怒らないようになる
- 「怒り」のコントロールによって感情全体のコントロールができるようになることで、耐ストレス性を高める
1.怒りとは何か
なくすことはできない防衛本能である
- 怒りは、危険から身を護るための防衛本能。なくすことは不可能。
怒りのメリットとデメリット
<メリット>
- 一瞬だけ、溜まった感情が解放される(すっきりする)
- 相手に自分の感情が伝わりやすい
- アクションを起こすためのエネルギーになる(「見返してやる」など)。
<デメリット>
- 周囲の空気を悪くする
- 失敗すると、失うものが多い(人間関係、財産、地位、名誉・・)
- 身体にダメージを与える
よい怒り、悪い怒り
- よい怒りは、「怒る必要のあること」を、後悔せずに怒れること。
- 悪い怒りは、あらゆる「後悔する」怒り方、ないし、怒らないことで「後悔する」状態。
2.なぜ怒るのか
怒りはネガティブな感情の発露である
- 「怒り」はネガティブな感情(一次感情)の結果として引き起こされる二次的な感情であり、「怒り」そのものにはあまり意味がない。
- 怒りを引き起こすネガティブな感情(一次感情)には、次のようなものがある。
<怒りを引き起こすネガティブな感情(例)>
- 辛い、苦しい、悲しい、怖い
- 疲れた、空腹だ、眠い
- 心配、焦り、嫌だ、不安だ
- 罪悪感、打ちひしがれている
○ネガティブな感情「だけ」では怒りは発生しない
- ただ単に上記のネガティブな感情「だけ」では怒りは発生しない。一次感情に、あるエネルギーが加わると、「怒り」に転化する。
怒りを発生させるエネルギーの正体は、個人特有の理想像「べき」である
- 自分の理想像である「べき」が、一次感情を「怒り」に転化させるエネルギーである。
-
人はすべて、各人固有のフィルターによって物事を判断しており、人生において培われた「習慣」「思い込み」「偏見」を必ず持っている。したがって、「べき」は個人によってその程度が異なっており、あらゆる事象の価値判断においてギャップが生じる。
- 自分特有の「べき」と「現実」のギャップが、「怒り」を生じせしめるエネルギーとなる。
- ギャップの存在そのものが、単純に怒りにつながるわけではなく、ここにさらにもう1つの変数がかけ算されることで、「怒り」の大きさが決まる。
怒りの大きさは、「一次感情」+「理想と現実のギャップ」×「心の余裕」で決まる
- 心の余裕が少ないときに、「怒り」は大きく顕れやすい。
-
怒っているときは、基本的に「感情的に弱っている(心の余裕がない)」状態。「怒り」そのものではなく、その背後の「感情」を生ぜしめた「一次感情」と「心の状態」こそが「怒り」の真因となる。
3.問題となる「怒り」の特徴
①強度が大きい
- (客観的に見て)小さなことで激昂しやすい
- 一度怒ると非常に強く怒ってしまう
②持続性が高い
③頻度が高い
- しょっちゅうイライラしている
- カチンとくることが多い
④攻撃性が高い
- モノに当たる
- 人に当たる
- 自分に当たる(自傷など)
4.怒りと巧く付き合う
衝動を押さえる(6秒ルール)
○「6~10秒」待つ
-
怒りの種が発生すると、まず「偏桃体」が情動を処理する。この段階で「怒り」を出してしまうのではなく、理性を司る「前頭葉」がその「怒り」を処理するまでの「時間稼ぎ」をする。
○「6~10秒待つ」ための対処法(例)
- ただちにその場から離れる
- 意識的に「別の動作」をして気を反らす(深呼吸する、水を飲む、ペンを回す、貧乏ゆすりをする・・・)
- カウントする(いち・に・さん、ワン・ツー・スリー、アン・ドゥ・・・)
○温度化する
- 人生で最大の怒りを「10」としたときに、今の怒りが「どのランク」だったのかを考えてみる。
- 1~3が「まあいいか」級、4~6が「なんだかな」級、7~9が「憤怒」級というイメージ。これを考えるだけで「6秒」を費消できる。
- 振り返りすぎると「思い出し怒り」を惹起してしまうので、「ランクづけ」はそのときだけにしておく。
思考を整理する(三重丸)
○自分が「許せる範囲」を三重丸で描く
-
「自分のべきと同じ」円を中心に置き、続いて「自分のべきとは違うがまあ許せる」円を周囲に描き、最後に「自分のべきとは違うし、許容できない」円を、順に三重丸にして描いてみる。
-
中心の円は、「自分の理想と同じ」領域なので、問題は発生しない。次の円は、要するに「許容範囲」である。ただし、しばしばそのときの「自分の機嫌」や「状況」、はたまた「怒りの相手が誰か」などによってこのサイズは変わってしまう。最後の円は、「これだけは絶対許せない」というものになる。
-
2番目の「許容範囲」は、「まあいいか」と許せるライン。要するにその人の「器の大きさ」である。この「器」を大きくしていくことが、思考をコントロールしていく要諦となる。
○「許容範囲」を鍛えるポイント
- 許容範囲を「大きくする」こと。
- 許容範囲を「安定させる」こと。機嫌や状況、相手などによってぶらさない。
- 許容範囲を「相手に具体的に開示する」こと。「具体的」というのは、「少なくとも」「せめて」「最低限これだけは」と定量化できることを指す。
行動に移す(コントロールする)
衝動を押さえ、思考を整理したら、いよいよ怒りのコントロール。「怒り」のメカニズムを知って、この行動を「実践」することが、実践的なトレーニングとなって、感情コントロールに活きてくる。
○行動マトリクス(基準は「自分にとって」)
○重要×変えられる(変える必要がある)
- 事象にすぐに取り掛かる。
- 自分がどうすれば満足水準に達するかを考え、それを具体的に(5W1Hを明確にして)伝える。
- 例:「遅刻癖が多い部下へ怒りをぶつける」⇒「10分前に出社するように指示して、それができない場合は指導することを伝える」
○重要×変えられない(変える必要がない)
- 変えられない現実を受け入れる。
- そのうえで、現実的な対処方法、解決策、選択肢を探す。
- 例:「荒天で楽しみにしていた遊園地に行けなくなった」⇒「代わりに、近くで見つけた屋内テーマパークに行くことにする」
○非重要×変えられる(変える必要がある)
- すぐに取り掛からなくてもよい。余力があるときに取り掛かる。
- 自分がどうすれば満足水準に達するかを考え、それを具体的に(5W1Hを明確にして)伝える。
- 例:「経理書類のミスを人前で注意され、恥ずかしさから怒りが収まらない」⇒「時間があるときに、『悪いけどメールで伝えてもらえますか』と頼んでみる」
○非重要×変えられない(変える必要がない)
- 放っておく。そもそも関わらない。
- ここのエネルギーを投入しない。
- 例:「強面の集団が、向かいのベンチで煙草のポイ捨てをしていた」⇒「放っておく」
公開開始:2022年1月27日
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