のび太たちは、習い事を何かしているのでしょうか?
静香はよく「ピアノのレッスンがあるの」と言っている印象がありますし、スネ夫もよく「塾にいかなくちゃ」と言っているのを見かけますね。
ではジャイアンは? のび太は? 「習い事」に関する描写をピックアップしてみました。
■のび太
あやうく家庭教師をつけられそうになりますが、すべて未遂。いつものメンバーの中では唯一、習い事を一切していません。
■静香
ピアノの描写がダントツに多いですね。
なおバイオリン演奏の描写もときどきみられるのですが(13巻「もどりライト」など)、「バイオリンを"習っている"」という明確な描写はみられなかったため、「習い事」のカウントからは除外しています。
■ジャイアン
すべて武術。さすがです。
■スネ夫
意外なことに、45巻の原作内では「家庭教師」の描写がありません(ただし大長編「日本誕生」では、親が「全部の教科に家庭教師をつける」ことに嫌気が指して家出をする
スネ夫が描かれています)。
ちなみに16巻「サハラ砂漠で勉強はできない」では、スネ夫が「ある私立有名中学に入学するために、猛勉強中だ」(のび太)という情報も描かれていることを付記しておきます。ということは、ここでの「塾」とは、補習塾ではなく、「進学塾」を指すと考えるほうが妥当でしょうか。
それではいつも通り、全23シーンのリストをご覧ください。
巻・話 | 種類 | 対象 | 描写 |
3巻「ママをとりかえっこ」 | ピアノ | 静香 | 静香のママ「さっき、どなったでしょ。ピアノのレッスンのことで。」 ※ここで、静香がピアノを習っていることが判明する。 |
3巻「ぼくを、ぼくの先生に」 | 家庭教師 | のび太 | のび太のママ「のびちゃんに家庭教師をつけようと思って。」 のび太のパパ「だって、学校の成績がどうもなあ。」 のび太のママ「せめて、家庭教師でもたのまなくちゃ、どうしようもないわ。」 あわてて止めに入るのび太。 |
3巻「ぼくを、ぼくの先生に」 | 家庭教師 | のび太 | のび太が中学生になった未来(3年後)。 のび太のパパ「やっぱり、家庭教師でもつけなくちゃいかんなあ。」 あわてて止めに入るのび太。まったく進歩していない・・・ |
5巻「黒おびのび太」 | 柔道 | ジャイアン | ジャイアン「おれな、とうちゃんに柔道ならってるんだぞ。」 |
9巻「ジーンと感動する話」 | 塾 | スネ夫 | スネ夫(のび太の話を振り切って)「じゅくへ行くんだよ。なぞなぞなんかやってるひまはないっ。」と怒り出す。 手には通塾用の手提げカバンが。 |
10巻「人間ラジコン」 | 塾 | スネ夫 | スネ夫(よる7時まで野球の猛特訓をすると怒るジャイアンに向かって)「あ、あの・・・・・・ぼく じゅくへ 行かなくちゃ。」とお伺いを立てる。 |
11巻「名刀〔電光丸〕」 | 剣道 | ジャイアン | 宮本武蔵を「もっとも尊敬する人物」に挙げたジャイアン。 スネ夫「それで剣道を習いはじめたの。」 ジャイアン「そうなんだよ。」と威張る。 この後、のび太が決闘を申し込まれる流れに・・・・・・ |
12巻「ウラオモテックス」 | 塾 | スネ夫 | おべっかを使うスネ夫の言葉を反復するのび太のママ。「まあ、すっかり宿題を終えて?夕方までにじゅくを三つもまわるの?スネ夫さんも感心ねぇ。」 それを受けたのび太の反論「あいつはじゅくへ行くといっては、さぼってんだ。先生におべっか使ってるから、しかられずにすんでるけど。」 |
13巻「七時に何かがおこる」 | ピアノ | 静香 | 静香「ピアノのおけいこにでかける時間なの。」と、のび太・ドラえもんとの遊びを中断する。 |
17巻「タッチてぶくろ」 | 家庭教師 | 静香 | のび太、静香と家庭教師(男子学生と思われる)が仲良く歩いているシーンを目撃。「しずちゃんが!家庭教師なんかといちゃいちゃして。」と憤慨する。 |
23巻「おそるべき正義ロープ」 | ピアノ | 静香 | のび太・ドラえもんと遊ぶ静香に、静香のママが「しずちゃん、ピアノのレッスンのお時間よ。」と伝えると、静香が「おなかがいたいから、休むわ。」と返事。のび太に対して、「ピアノの先生、きびしいからきらい。」と心情を打ち明ける静香。 |
27巻「人間ブックカバー」 | ピアノ | 静香 | 「人間ブックカバーで本になって」とお願いするのび太に、「いやあよ、本になるなんて!ピアノのレッスンもあるし。」と断る静香。 |
28巻「しんじゅ製造アコヤケース」 | 塾 | スネ夫 | 空き地で大切な真珠をなくして泣きじゃくる静香。居合わせたスネ夫は、「ぼく、じゅくへいかなくちゃ。」と逃げ出す。 |
30巻「ホンワカキャップ」 | 塾 | スネ夫 | ジャイアン「えん会やるからコーラもっておれんちへこい。」 スネ夫「塾へ行くところなんだよ。」 手には通塾用の手提げカバンが。この時のスネ夫の心底厭そうな顔と言ったら、実に傑作である。 その後、「ホンワカキャップ」で酔っ払い、くだを捲くスネ夫にすっかり参ってしまったジャイアン(ジャイアンは酔うと乙女チックになる)は「そろそろ塾へいかなくていいの?」とスネ夫に尋ねる。するとスネ夫は、「るせえ!!もっとつげ!!」・・・・あとはスネ夫のターンである。 |
31巻「時門で長ーい一日」 | ピアノ | 静香 | 遊びに来ていたのび太が帰る。静香「わたしもピアノのおけいこはじめるわ。」 |
31巻「恐竜さん日本へどうぞ」 | ピアノ | 静香 | 遊びに誘うのび太に静香が、「宿題をすまして、ピアノのおけいこしてからいくわ。」 |
33巻「あの道この道楽な道」 | ピアノ | 静香 |
「クロス・スイッチ」で静香の生活にスイッチしたのび太が、ピアノの練習をする(アップライトピアノ使用)。ピアノの先生(男)から、「きゅうにへたになりましたね。あと三十回!!」と叱られる。 実際に習い事をしているシーンが描かれているのは実に珍しい。 |
33巻「ガッコ―仮面登場」 | 家庭教師 | のび太 | のび太のパパとママの相談。「このままでは・・・・・・、のび太の成績が・・・・・・。やはり、家庭教師を・・・・・・。」 必死で止めるのび太。「家庭教師なんかたのむといくらかかるかしってるの?友だちの例では、Aくんは・・・。Bくんは・・・。そんな負担を親にかけるなんて、とてもぼくにはできないなあ。」と具体的な事例を交えて論理的に説明する。 のび太のパパ「えーっ、そんなにかかるのかい?」 |
36巻「貸し切りチップ」 | ピアノ | 静香 | 静香と映画を見に行こうとするのび太。 静香「いけない!ピアノのレッスンがあるの忘れてたわ。」 |
38巻「石器時代のホテル」 | ピアノ | 静香 | 静香「ピアノのレッスンがいやでにげてきたの。」 |
39巻「さとりヘルメット」 | ピアノ | 静香 | レッスンバッグを持って歩く静香を見て、のび太「え、これからピアノのおけいこ?じゃ、しかたない。」 |
41巻「つづきをヨロシク」 | ピアノ | 静香 | のび太に対して静香「いま手がはなせないのよ。ピアノのおけいこで・・・・・・。」 静香のママ「もうやめたの?あと一時間はひかなきゃだめよ。」 静香「ママがうるさいから、しかたなく・・・・・・。ほんとはバイオリンがすきなのに。」 静香の家のピアノの描写再び。やはりアップライトピアノである。 |
41巻「つづきをヨロシク」 | 塾 | スネ夫 | ジャイアンのリサイタルのリハーサルに「拍手係」として付き合わされるスネ夫。「じゅくへいかなくちゃ!」 |
ある時は断りの口実に、またある時はストーリーの伏線に。ドラえもんの世界では、「習い事」がストーリー転換のアイテムとして活用されている様子が伺えます。
特徴的なのは、実際に習い事をしているシーンが描かれたのが17巻「タッチてぶくろ」と、33巻「あの道この道らくな道」の2話だけという点です。「習い事」の世界が、「絵」ではなく、ほとんど台詞レベルでのみ描かれているのですね。せっかく漫画で「脱日常」をして没入しているところに、「習い事」という「現実のリアル」がビジュアルで入ってきてしまうと、確かに興覚めしてしまうかもしれません。こんなところにも、ドラえもんが子どもに愛され続けている理由があるのかもしれません。
●参考文献: 藤子・F・不二雄 『ドラえもん』1-45巻、小学館(てんとう虫コミックス) ●謝辞:Victorlさまからの貴重な投稿資料に基づいて作成いたしました。ありがとうございます。
初版公開: 2022年6月28日