ドラえもんが嫌いなものと言えばネズミです。あまりの嫌いぶりに、一度は「地球はかいばくだん」まで取り出したことは有名です。
今回は、ネズミが登場した全てのシーンを調査し、ドラえもんとネズミの闘いの記録をまとめてみました。
まずは、ネズミとドラえもんの闘いの様子(ドラえもんの反応)を見てみましょう。
資料1:ネズミに遭遇した時のドラえもんの反応
数えてみると、ほとんどの場合はその場から逃げ出しているのですが(全体の4割強)、中には強力な武器を出したり、未来の道具を使って撃退したりすることもあるようです。
結局、
23シーン中、3勝17敗3分け
という結果になりました。殆ど惨敗です。
未来の道具を持っていながら、この結果はあまりにもお粗末といえますね。
勝敗の分類方法 ○勝ち:ドラえもんがネズミを追い出す、退治する ×負け:ドラえもんが逃げ出す、気絶する、居なくなるまで隠れ続ける △引き分け:勝敗不明、またはオチの段階で痛み分けとなる |
ちなみに、ドラえもんはどのような場所でネズミと対峙することが多いのかも調べてみました。
資料2:ネズミが登場したシチュエーション
ご覧のとおり、全23シーン(22か所)中、野比家が73%と圧倒的です。ドラえもんにとっては、野比家は必ずしも安住の地とはいえないのかもしれません。
それでは、シーン別のリスト(ネズミの登場シーンの全リスト&ドラえもん対ネズミの勝敗表)をご覧ください。
巻・話 | ドラえもんの叫び | 状況 | 勝敗 |
1巻「○○が××と△△する」 | 「ウギャ ネズミ!ネズミ!」 | のび太、「かならず実現する予定メモ帳」に、「ドラえもんがママとテーブルの上でゴーゴーをおどる」と書き込む。 居間にいた玉子の悲鳴を聞いたドラえもんが行ってみると、そこにはネズミが・・。机の上で恐怖のダンスを踊るドラえもんと玉子であった。 | × |
2巻「恐竜ハンター」 | 「ギャア こわい こわい。」 | ドラえもん、のび太に「(恐竜狩りには)強いからだと、何ものもおそれない勇気が必要だ。」と説教する。 その合間にネズミが現れて、のび太に飛びつくドラえもん。敢え無く説教はご破談に。 | × |
7巻「ネズミとばくだん」 | 「ネズミだ!!」 | 「で、で、で、で、でたのよ。」とうろたえてのび太の部屋に逃げ込んでくる玉子の悲鳴を聞いて、 「どうもね。おとながあんなにうろたえるとみっともないもんだね。」とあきれるドラえもん。 しかし、その正体がネズミだと知ると・・・ 恐怖の余りついに気が狂ったドラえもん、機関銃を家じゅうにぶっ放し、「ジャンボ・ガン」(戦車を吹き飛ばす)をのび太に、「熱戦銃」(鉄筋のビルを煙にする)を玉子に渡し、挙句の果てには「地球はかいばくだん」を取り出して・・ 必死でなだめるのび太と玉子であった。 | × |
8巻「進化退化放射線源」 | 「キャア」 | 「進化退化放射線源」の実験のため、「身近な動物」としてネズミを持ち出したのび太。当然ながら、逃げ出すドラえもんであった。 | × |
8巻「見たままスコープ」 ★ | 「キャア ネズミ!!」 | 「見たままスコープ」で記憶を映写するのび太。 ジャイアンとスネ夫に「ねずみのおもちゃが飛び出すびっくりカメラ」でおどろかされるシーンに遭遇し、慌てて部屋を飛び出すドラえもんであった。 | × |
9巻「世の中うそだらけ」 ☆ | 台詞なし | 「ギシンアンキ」を飲んで酷い疑心暗鬼になったのび太。「スナオン」を飲ませて素直にさせようとするドラえもんを追い返すため、「ネズミ!」と叫ぶ。 逃げ出すドラえもん。 | × |
12巻「ペットそっくりまんじゅう」 * | 台詞なし | 押し入れにどら焼きを隠していたドラえもんだったが、いつの間にか消えてなくなっていた。 腹ごなしに、ペットとそっくりになる「ペットそっくりまんじゅう」を食べたドラえもん。食べているうちにネズミそっくりの顔になり・・・ のび太の冷静な分析 涙を流して駆けずり回るドラえもんであった。 | × |
13巻「風神さわぎ」 | 「わあ ネズミ ネズミ」 | 強力うちわ「風神」で、調子に乗って喧嘩をはじめる子どもたちに激怒したドラえもん。 空き地で「風神」を没収しようとしたところ、ネズミが出現。驚いたドラえもんは、「風神」でネズミもろとも子供たちを吹き飛ばす・・・ | ○ |
15巻「ネコが会社を作ったよ」 | 台詞なし(平然と眺めている) | のび太が拾ってきた捨て猫4匹に「タイマー」をつけて、野比家のネズミ退治をさせたドラえもん。 猫がネズミを追い出すが、平然とその様子を眺めているドラえもんであった。異例。 | ○ |
17巻「驚音波発信機」 | 「のび太!」 | ネズミに遭遇したドラえもん、大騒ぎをして家を飛び出す。 「爆弾で家もろともふっとばしてやれ。」と興奮するドラえもん。「おちつけドラえもん!気をたしかに!なんかありそうなもんだろ、未来のネズミ取りかなんか。」と冷静な指摘をするのび太。 その後、「驚音波発振式ネズミ・ゴキブリ・南京虫・家ダニ・白アリ退治機」でジャイアンの歌を「驚音波」に変換し、見事、家のネズミ退治に成功する。 | ○ |
18巻「スリルブーメラン」 | 「ウンギャー」 | 唐突にネズミが登場し、驚いてのび太の机の中(タイムマシン)へ逃げ出すドラえもん。 | × |
21巻「だいこんダンスパーティー」 * | 「キャッ。」 | 「新種植物製造機」で、ネズミ型チューリップを製造したのび太。 のび太の机の中に飛び込むドラえもん。 | × |
22巻「しつけキャンディー」 | 「そんなしつけがあるかっ!!」 | 言うことが本当になる「しつけキャンディ」。勉強させようとするドラえもんからそのキャンディを横取りしたのび太、「テレビのじゃまをしたら、ネズミがでるよ。」と言う。 巨大ネズミが出現し、出るに出られなくなったドラえもんであった。 | × |
22巻「ラジコンシミュレーターでぶっとばせ」 | 「フギァーア」 | 「ラジコンシミュレータ」でラジコンカーを操縦するのび太。押し入れの暗闇に潜んでいたのはネズミ。巨大スクリーンにアップで表示される。 驚いて、のび太の机の中に逃げ込むドラえもんであった。 | × |
22巻「のび太救出決死探検隊」 | 「ドブネズミ!」 | スモールライトで小さくなってラジコン飛行機に乗ったのび太。裏山に墜落し、行方不明に。 救出に向かうドラえもんだったが、途中、ジャイアン・スネ夫・静香と出会い、わざわざ自分たちも小さくなって、探検家気分で救出に向かうことになった。 途中、ドブネズミと遭遇。途端に気絶するドラえもんであった。 | × |
28巻「夢はしご」★ | 台詞なし | 夢の中を行き来できる「夢はしご」。 のび太をいじめるジャイアンの夢に、のび太救出に向かったドラえもん。ジャイアンはドラえもんに変身し、ポケットから「ネズミのびっくり箱」を出してドラえもんを撃退。 | × |
30巻「することレンズ」 ★ | 台詞なし | 静香からネズミのびっくり箱をもらったのび太。ドラえもんを驚かそうとするが、「することレンズ」でバレる。 「ぼくのネズミぎらいしってるくせに!ゆるせない!!」と、鉛筆や消しゴム、三角定規を投げてのび太に激怒するドラえもん。 | △ |
31巻「ターザンパンツ」 | 「キャー」 | 空き地で「ターザンパンツ」を履いて、犬を呼ぼうとするのび太。間違えて大量のネズミ(13匹以上)を呼んでしまう。 慌てて逃げ出すドラえもんであった。 | × |
34巻「タネなしマジック」 | 「ギャー」 | 「タネなしマジックハンカチ」の説明をするドラえもん。突然、ネズミが登場する。 押し入れに逃げ込むドラえもん。 | × |
35巻「ドンジャラ村のホイ」 | 「やだ、そんなものにのるぐらいなら、死んだほうがましだっ。」 | 小人族ホイの家族さがしを手伝うのび太とドラえもん。 「万能手綱」をネズミに括り付けたホイだったが、ドラえもんはそれに乗ることを涙ながらに大騒ぎして拒否。 | △ |
41巻「ハメルンチャルメラ」 | 「ギャー、でたあ。」 | 「ネ、ネ、ネズミが。うぬ、おのれ。この家もろともぶっとばしてやる!!」と、ミサイルやピストル、剣、誘導爆弾を出してうろたえまくるドラえもん。 | × |
41巻「ハメルンチャルメラ」 | 台詞なし | 「ハメルンチャルメラ」でのび太がタンスの陰に向かって笛を吹くと、ネズミは山の中へ向かって消えていった。その様子を観て、天井に駆け上って逃げるドラえもん。 ・・その後、のび太自身が「ハメルンチャルメラ」の被害者となり、山の中へ消えていくことに・・・ 結局、笛を逆さまに吹くことで、ネズミも家へ戻ってくることに・・。 | △ |
45巻「身がわり紙人形」 ☆ | 台詞なし | 静香宅でひなまつりパーティー。いつまでもドラえもんが来ない。迎えに行くのび太。 ドラえもんは、階段下でネズミに遭遇し、逃げたはずみでプレゼントを階下に落としたまま、のび太の部屋で待機中であった。 | × |
凡例;
無印: 本物のネズミが登場
★: おもちゃのネズミが登場
☆: 「ネズミ」という言葉だけが登場
*: ネズミに類似した造形物が登場
やはりミサイルなど危険な武器をたくさん持っているのが、回数は少ないものの、きわめて印象的です。
一口に「ネズミを怖がるドラえもん」といっても、様々なバリエーションがあることに驚かされます。常に「ギャー、ネズミ」といって逃げるか、気絶するかだと思っていたのですが、気絶は1回だけというのはちょっと意外でした。
このような主人公の「特定恐怖」はこれまでにも様々な漫画で描かれていますが(『オバQ』Q太郎の"イヌ嫌い"などは典型的な例ですね)、それをここまで様々なパターンで描くF先生の表現の豊かさには改めて感服するばかりです。
参考文献: 藤子・F・不二雄 『ドラえもん』1-45巻、小学館(てんとう虫コミックス)
謝辞;
今回の調査も、前回に引き続き、Victorlさまの貴重な投稿資料に大幅に依拠して作成いたしました。
「ドラえもんとネズミ」は極めて重要なテーマです。基礎的な「ネズミの登場シーン」の調査も兼ねて、大変興味深くまとめることができました。
再度となりますが、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
最終更新: 2012年8月17日(更新番号1)
初版公開: 2012年8月17日