「ドラえもん」と言えば、「アヒル口("3"の形をした口)」を思い出す方も多いでしょう。
(※参考:藤子・F・不二雄『ドラえもんプラス』4巻、2006 小学館 背表紙より)
↑この口の形ですが、よく考えてみると、かなり頻繁に目にするような気がします。
そこで今回は、ドラえもんに出てくるキャラクターが、「アヒル口」をする回数を数えてみました。
(てんとう虫コミックス「ドラえもん」45巻に登場するすべてのキャラクターをカウント)
その数、実に3182回!
・・・すさまじい数です。
キャラ別の内訳をみてみましょう。果たして誰が一番アヒル口をしているのでしょう?
トップはジャイアンで、なんと1189回(37%)。次いで904回のドラえもん(28%)、715回ののび太(23%)、と続きます。
すべてのキャラの詳細は、以下をご覧ください。
■キャラ別「"3"のクチ」回数リスト
キャラ名 | 回数 |
ジャイアン | 1189 |
ドラえもん | 904 |
のび太 | 715 |
のび助 | 87 |
友人たち | 76 |
ジャイアンの母 | 29 |
先生 | 26 |
玉子 | 22 |
ジャイアンクローン | 14 |
動物園の飼育係 | 13 |
静香 | 9 |
ジャイアンの父 | 8 |
近所のおばさん | 7 |
ジャイ子 | 7 |
関取 | 6 |
ジャイアンの先祖(原始時代) | 4 |
のびろべえ | 4 |
ドラミ | 4 |
別の星のジャイアン | 4 |
ジャイアン人形 | 4 |
のび作 | 3 |
コレクター | 3 |
村人 | 3 |
ノビスケ | 3 |
玉夫 | 2 |
工事の人 | 2 |
のび助の友人 | 2 |
タイムパトロール隊員 | 2 |
家に来たお客さん | 2 |
無職 | 2 |
近所の子ども | 2 |
近所の人 | 2 |
町の人 | 2 |
別の星ののび太 | 2 |
ジャイアンの先祖(明治時代) | 2 |
近所の人 | 2 |
セワシ | 1 |
ジャイアンの先祖(戦国時代) | 1 |
ジャイアンのいとこ | 1 |
あべこべの星のジャイアン | 1 |
未来のペットショップ店員 | 1 |
バケルの父 | 1 |
通行人 | 1 |
牛乳配達員 | 1 |
文房具屋さん | 1 |
チューリップ | 1 |
駅員 | 1 |
警察官 | 1 |
テレビタレント | 1 |
ペルシャネコ | 1 |
合計 | 3182 |
このようにしてみると、剛田家(ジャイアン一族)と野比家(のび太一族)が群を抜いて多いことがわかります。
ジャイアン一族は、1264回と全体の40%を占める勢いです。もはや、『ドラえもん』は「ジャイアン一族のアヒル口を愉しむ漫画」といっても過言ではありません。ジャイアンにジャイアンの母ちゃん、父ちゃん、そしてジャイ子・・と、剛田一族の「アヒル口好き」には恐れ入ります。もっとも、アピールをしたところで全然かわいくはないのですが・・。
次いで主人公ののび太一族。こちらが839回で、全体の26.4%となります。ジャイアン一族とのび太一族で、実に66%。見事な占有率です。
一方、口がとがっている骨川家(スネ夫一族)は、残念なことに一度もアヒル口をすることなく、生活しているようです。顔の構造的にできないのでしょう。かわいそうに。
■どんなときにアヒル口をするのか
あまりにもサンプル数が多すぎて、的確な分類が難しいのですが、おおむね、以下の10種類に分けられるようです。
A:驚いたり、困惑したりしたとき
B:相手に注意したり、非難したりするとき
C:怒ったとき
D:知らん顔をするとき、あまり話を聞いていないとき
E:嬉しいとき
F:悲しいとき
G:不満があるとき
H:寝ているとき
I:もともとそのような顔のキャラクターである
J:その他分類困難
こうしてみると、ほとんどの感情を網羅しているようです。ドラえもん世界において、「アヒル口」は非常に汎用性の高い表情であるということが言えましょう。
もっとも多いのはAタイプで、次いでC、Dと続くようです(あくまでも感覚ですが)。この辺りは、継続的な研究が必要なところです。
■数えていて気付いた「アヒル口」に関する豆知識
いろいろなことに気づきました。それを列挙します。
・単行本の中ではじめてアヒル口になるのは、意外なことに「お客さん」(1巻『動物変身ビスケット』) 。
・ドラえもんは、8巻当たりから急激にアヒル口の使用頻度が高まる。30巻からはより頻繁に用いられる。
・ドラえもんが背表紙でアヒル口をするのは2巻のみ。中表紙には18巻から登場する。
・ジャイアンは、24巻あたりから、クチの描写そのものが省略されるケースが増えてくる。
・いつも怒っているジャイアン(「ジャイアンの暴力・完全リスト」参照)、いつもいやな目に合っているのび太(「のび太のドジ大全」参照)、その源であるのび助のドジっぷり(「のび太のパパ・受難大全」)などからも分かるように、結局、様々な要因で表情が豊かになりやすいキャラの「アヒル口」率が高いという結果に。
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数えてみると、予想以上にアヒル口をするキャラが多くて驚きました。例えばのび太の先生も、ひっそりと26回もアヒル口をしており、上位にランクインしています。
「表情の豊かさ」は、作品としての『ドラえもん』の魅力の一つですが、その中にあってこの「アヒル口」は、作品に大きな影響を与えていることは間違いありません。
『ドラえもん』は、日本一の「アヒル口漫画」と言えましょう。
参考文献: 藤子・F・不二雄 『ドラえもん』1-45巻、小学館(てんとう虫コミックス)
謝辞;
今回の調査のきっかけは、ある読者の方からのご質問でした。
「ドラえもんが口を数字の3のように尖らす「"3"のクチ」はコミックスの中で何コマあるのでしょうか?
読んでいるとこの"3クチ状態のドラえもん"をよく目にするため、ちょっと気になりまして・・・。」
大変面白いアイデアをいただきました。ありがとうございます。実際はドラえもんよりも、ジャイアン一族が圧倒していたわけですが・・・。これは意外な結果でした。特にここに感謝の意を記すものです。
最終更新: 2012年8月11日(更新番号2)
初版公開: 2012年6月11日