『ドラえもん』を読み返していて、思わず笑ってしまうのが、野比家の人々があまりにも普通の顔で「窓から道具やモノを捨てる」シーンです。これは普通ではありません。
数えてみると、このグラフの通りになりました。
▼作中で「不法投棄」をしたキャラ別の割合(全36シーン)
※うち、野比家の窓から(全14シーン)
※うち、野比家の窓以外から(全22シーン)
よく見ると、静香や出木杉も混じっているのが驚きです。
ジャイアンは意外と少ない・・
それよりも何よりも、ドラえもん!!
彼はどこでも捨てすぎです。
今のエコブームが進むと、
未来人はポイ捨てなんてしないと思っていたのですが・・・
ということで、いつもの通りリスト化してみました。
1.野比家の窓から
巻・話 | 投棄者 | 投棄した物 | 状況 |
2巻「かならず当たる手相セット」 | キイちゃん | 手相を消すクリーム | のび太、間違えて「悪運の相」を手に書く。 親戚の女の子キイちゃんが、その手相を消すクリームを「ポイ」と捨てる。路上には走行中のダンプカーが・・・王道パターンである。 |
5巻「地球製造法」 | 玉子 | 地球 | のび太が作った地球。粘土のゴミと勘違いして、そのまま窓からポイ・・なぜ窓から捨てる・・・ |
15巻「ポータブル国会」 | のび太 | ゴミ | 玉子に耳をつかまれ、「二階の窓からゴミをすてたでしょ!」と怒られる。庭にはたくさんのゴミが・・・ |
16巻「ナゲーなげなわ」 | ドラえもん | ナゲーなげなわ | のび太に「ナゲーなげなわ」を貸すまいと、庭から道具を投げ捨てるドラえもん。 |
19巻「ロボッターの反乱」 | のび太 | ラジオ | 古いラジオ。「安ものだし、古くなったからな。もっといいの買ってもらお。」と、躊躇なくポイ捨て。 |
21巻「恐竜がでた!?」 | のび助 | 恐竜 | 虫と勘違いして、小さくなった恐竜をほうきで掃き出すのび助・・・ |
22巻「温泉ロープでいい湯だな」 | 玉子 | 温泉ロープ | ジャイアンとスネ夫が全裸で入浴中の「温泉ロープ」を、「こんなひもすてちゃいます。」と窓の外へポイ・・・ |
27巻「キンシひょうしき」 | ドラえもん | ペンチ | のび太が勉強に集中できるよう、「ひるね禁止」の標識を立てたドラえもん。抗うのび太の目の前で、その標識を抜くペンチを窓の外へ・・。効果音は、もちろん「ポイ」・・・。 |
31巻「恐竜さん 日本へどうぞ」 | ドラえもん | 招待錠 | 誰でも招待できる「招待錠」。 いきなり「あの人でためしてみよう」と、サラリーマンのおじさんの口の中へポイ・・・乱暴すぎる・・・ |
33巻「いやになったらヒューズをとばせ」 | ドラえもん | いやなことヒューズ | 道具を乱用するのび太に怒り、「こんなものすてちゃえ。」と窓の外へ思い切り投げるドラえもん。 |
34巻「自動返送荷札」 | ドラえもん | 漫画『ガラスのカメ』 | 道具「自動返送荷札」の効果を確かめるため、わざわざ「道にすてる。」と言って窓から放り投げるドラえもん。 |
41巻「落し物カムバックスプレー」 | のび太 | 野球のボール | 「落し物カムバックスプレー」の効果を試すために、野球のボールを窓から思い切り投げるのび太。 |
44巻「ムシャクシャ カーッとしたら」 | ドラえもん | 勉強机の椅子 | 「ムシャクシャタイマー」の効果を見せるために、机の椅子を思い切り投げつけるドラえもん。 |
44巻「季節カンヅメ」 | ドラえもん (3回) |
季節カンヅメ | 夏。 「季節カンヅメ」の効果を見せるため、何と隣の家の庭に「春」や「秋」のカンヅメを投げつけるドラえもん。 玉子は「冬」の、のび助は「夏」のカンヅメを好み、お互いに捨てあって戦う。 少なくとも6本の缶を投げ込まれた隣家は、季節がメチャクチャになり、「いいかげんにしてください!!」と怒る・・・。 |
玉子 | |||
のび助 |
2.野比家の窓以外から
巻・話 | 投棄者 | 投棄した物 | 投棄場所 | 状況 |
2巻「正直太郎」 | スネ夫 | 正直太郎 | 路上 |
盗んだ道具「正直太郎」のせいで酷い目にあったスネ夫。 「おまえなんか、こわれちまえ!!」と蹴り飛ばして捨てる。 |
3巻「シャーロックホームズ・セット」 | のび太 | 静香の家から勝手に持ち出した本 | 人の家の庭 | 勝手に人の家から借りた本を、話に夢中になって思わず捨ててしまった。が、それにも気づかない・・という最低なのび太であった。 |
3巻「ああ、好き、好き、好き!」 | のび太 | キューピッドの弓と矢 | 公園 | 「キューピッドの弓と矢」を持て余したのび太、「すてちゃえ。」と、ポイ。 |
4巻「ラッキーガン」 | のび太 | ラッキーガン | 路上 | 悪運を招く「黒玉」だけが込められたラッキーガンを、「こんなもの。」と捨てるのび太。 |
8巻「悪運ダイヤ」 | ドラえもん | 悪運ダイヤ | 遠くへ向かって | 人に悪運をもたらすダイヤを、屋根から適当に放り投げるドラえもん。悪意が一切感じられない・・・ |
14巻「台風発生機」 | のび太 | ガム | 路上 |
噛んでいたガムを道端に捨てるという、典型的なポイ捨てをしたのび太。 それを見咎めて激怒したのは、何とジャイアン・・・ |
16巻「お金なんか大きらい!」 | ドラえもん | 気まえのよくなる薬と、お金がきらいになる薬 | 路上 | 間違えて出した「気まえのよくなる薬」と「お金がきらいになる薬」。ポケットにしまえばいいのに、そのまま路上にポイ・・・ |
17巻「バイバイン」 | ドラえもん | 栗まんじゅう | 宇宙 | のび太が調子に乗って増やし過ぎた「栗まんじゅう」。5分ごとに倍になるため、地球上では対処しきれず、宇宙ゴミとして処理することに・・・ |
20巻「ふくびんコンビ」 | スネ夫 | 模型のヘリ | 路上 | 飽きてしまった模型のヘリを、庭から路上にいるのび太の頭上に向けて投げつける。思考回路が分からない・・・。 |
20巻「実物立体日光写真」 | スネ夫のママ | スネ夫の日光写真(実物大立体) | 自宅庭 | 自分の立体写真を使って親を脅かしたスネ夫。ママ、「いたずらばっかり!!」と怒り、我が子の立体写真を庭へポイ・・・ |
21巻「まねコン」 | 静香 | まねコン | 路上 |
のび太が静香に仕掛けた「まねコン」が頭上にあることを発見した静香。「なにかしら。」と気にするものの、すぐに窓からポイ・・・ 静香まで「窓からポイ族」だったとは・・・ |
22巻「出木杉グッスリ作戦」 | 出木杉 | グッスリまくら | 自宅庭 |
成績の良い出木杉を眠らせようと画策するのび太。「グッスリまくら」を仕掛けるも、出木杉には通用せず、「なんだ、このへんなまくらは。」と結局窓の外へ捨てられる・・・ しかし出木杉まで「窓からポイ族」だったことが分かる衝撃的な作品であった。 |
23巻「おそるべき正義ロープ」 | はる夫 | 空き缶 | 路上 | これだけあると、空き缶のポイ捨てが正常に見える・・・ はる夫は、「正義ロープ」によって縛りあげられてしまう。 |
24巻「火災予定報知ベル」 | 男 | 煙草 | 路上 | ガムをポイ捨て→靴につく→ポイ捨てした煙草が靴の裏に突く→自宅炎上・・という「ポイ捨ての恐怖」を10ページで簡潔に著した作品。これは子ども心に「ポイ捨てはやめよう」と思うはず・・。 |
男 | ガムと煙草 | 路上 | ||
24巻「まんが家ジャイ子」 | ドラえもん | マジックおなか | 路上 |
「マジックおなか」でジャイ子の漫画を無理やり笑おうと作戦を立てていたのび太とドラえもん。 途中で、「だいたいね、おせじでわらうというのが気にいらない!つまらないまんがなら、つまらないとはっきりいうべきだ!」ときわめて正論を吐きながら、「マジックおなか」をポイ捨てするドラえもんであった。ポイ捨てはいいのか・・・ |
27巻「カッコータマゴ」 | スネ夫のママ | カッコータマゴ | 庭・・のはずが、ドラえもんの口の中へ | のび太のズボンに入っていたカッコータマゴを、「?」と無言で窓の外へ捨てるスネ夫のママ・・・ |
33巻「ポスターになったのび太」 | 静香 出木杉 |
のび太が扮したポスター | 自宅庭 |
のび太、ポスターに扮して静香の部屋に飾ってもらう。 本物ののび太と知らない静香と出木杉、ポスター(=のび太)が寝てしまったことに驚き、「おばけポスターだ!まるめちゃえ。」とクシャクシャにした上、窓の外へポイ・・・ 静香のママは「おにわへゴミをすてちゃいけません!!」と怒った上、火をつけて燃やそうとする・・・ |
33巻「大人をしかる腕章」 | おじさん | 煙草 | 路上 |
ポイ捨てする大人を叱るのび太。 まぁ・・当の本人も結構ポイ捨てしているわけですが・・・ それはともかく、正義のエスカレートは、その逆の結果を招く―。正しい「正義」とはなにか、この話は教えてくれるようです。 |
おじさん | 煙草 | 路上 | ||
おばさん | ゴミ | 路上 | ||
36巻「タイムふしあな」 | 静香 | タイムふしあな | 遠くへ向かって | 過去を覗ける「タイムふしあな」で、静香の脱衣シーンを堪能していたのび太。それに気付いた静香は激怒し、「こんなもの!!」と、「タイムふしあな」を力任せに投げつける・・ |
41巻「無人島の大怪物」 | ドラえもん | 変身リングとカード | 無人島の草むら | のび太が泳げるように道具を出そうとしたドラえもん。最初に「変身リングとカード」を出すが、「かんたんすぎる」と、道具を放り投げる。そのままポケットにしまえばよかったのに・・・ |
43巻「ラジ難チュー難の相?」 | どこかの父ちゃん | ラジカセ | 路上 | 「あんな物ばかりきいているから、勉強がはかどらないんだ。」と、子どものラジカセを窓の外へポイ・・・タケコプターで飛行中ののび太にヒットする・・・ |
44巻「人の身になるタチバガン」 | ジャイアン | ランドセル | 人の家の庭 | のび太をいじめるジャイアン。ランドセルを怖い犬のいる庭にポイ・・という典型的ないじめっ子行動をとる。 |
44巻「虫よせボード」 | ジャイアン | 虫よせボード | 空き地の草むら |
奪った「虫よせボード」で酷い目に遭ったジャイアン。 「使ったら返してよ。」」とやって来たドラえもんとのび太に対し、「すてちゃったぞ もんくあるか。」と凄む。 |
・・・予想以上に凄い量です。日本一のポイ捨て漫画といえるでしょう。
ドラえもん(←未来世界はゴミを自動回収でもしてくれるのか?と思ってしまうくらい、気にしなさすぎです・・)だけでなく、野比家の面々中心に、次からポイ、次からポイ・・・これだけ集めてみると、圧巻ですらあります。
重要なのは、一見何気ない<ポイ捨て>によって、ストーリーが劇的に展開していくという黄金律が、作中で何度も繰り返し使われているところでしょう。
1つのポイ捨てであっても、その先に待ち受けるストーリーは多種多様。これはもはや、「技」といってもいいレベルで、見ていてほれぼれします。この意味でも間違いなく、ドラえもんは日本一の「ポイ捨て漫画」だといえます。
また見ているうちに、「ああ、何でもポイポイ捨てると、のび太みたいな失敗をしてしまうんだなぁ」と気づく、という教育的効果もありそうです(笑
参考文献: 藤子・F・不二雄『ドラえもん』1-45巻(小学館) 2011.07.04公開