『ドラえもん』を読んでいると、のび太がドラえもんに頼り切り、
ありもしない道具を「出せ!」「出せ!」と無茶振りで迫る図が出てきます。
例えば、
のび太 「目でピーナッツかみ機出してよ」
ドラえもん「そんなの ないなあ」
・・・のような。
数えてみると、そんな「無茶振り」シーンは何と 37!
今回はそんな、のび太の無茶振りの症例を、
ドラえもんの実に冷たい「切り返し」とともに集めてみました
巻・話 |
のび太の |
ドラえもんの 冷たい切り返し |
1巻「かげがり」 | パパに草むしりを命じられたのび太、 「草むしり機出してよ。」 ・・・実に安直。 |
「そんなものない。」 |
1巻「走れ!ウマタケ」 |
竹馬に乗れないのび太、未来の最近型タケウマをおねだりするが、ドラえもんに「そんなものないってのに」と突き放される。 それでも「なくても、だしてくれないと困るんだ。」と食い下がる。 |
「二十二世紀には、 もうタケウマなんか はやらないの!!」 |
2巻「オオカミ一家」 | 絶滅したはずのオオカミを探すことにしたのび太。 もし見つけられなかったら、「目でピーナッツをかむ」と意味不明な約束。 結局オオカミの発見を公表することはできず、困ったのび太はドラえもんに、 |
「そんなのないなあ。」 |
3巻「ボーナス1024倍」 | 期待していたパパのボーナスによるおこづかいがもらえなかったのび太。 「ねえ、ドラえもん。ボーナスをふやす機械はないかしら。」 |
「そんなのがあれば、 苦労しないよ。」 その通り。 |
3巻「ゆめの町、ノビタランド」 | 開発で土地を追われる子どもたち。 「ドラえもん、あき地をつくる機械をだして。」 |
「土地だけは作れないなあ。」 |
4巻「ペロ!生き返って!」 | 死んだ犬を生き返らせることを静香と約束し、それを懇願するのび太。 | 「むちゃなやくそくしたなあ。死んだものを生き返らせるなんて・・・。いくらぼくでも、できることとできないことがあるよ。」 |
4巻「してない貯金を使う法」 | 金欠ののび太。 「おカネを作る機械」をドラえもんにおねだりする。 |
「ばかいえ!! かってにお金を作るなんて、犯罪だぞ。」と激怒。 |
6巻「夜の世界の王様だ!」 | 寝付けないのび太。寝ているドラえもんを叩き起し、 「自動ラーメン作り機ってない?」 |
「ないよっ!」 |
6巻「ダイリガム」 | スネ夫のボールを弁償することになったのび太。 「ボールを作る機械をだしてよ。」 |
「そんなもの あるかよ。」 |
9巻「無人島の作り方」 | のび太、海に無人島を作るものの、日本国政府に接収されてしまう。 悔しがるのび太、「なんか出してよ、空中に土地をつくる機械とか。」とドラえもんの腹をまさぐる。 |
「そんなの ないない!」 |
10巻「のび太の恐竜」 | 恐竜を探すことにしたのび太。 もし見つけられなかったら、「鼻でスパゲッティ食べてみせる!」と意味不明な約束。 結局、恐竜の発見を公表することはできず、困ったのび太はドラえもんに、 |
「できることかできないことか考えてからしゃべるもんだ!」 |
11巻「ジャイアンの心の友」 | ジャイアンに殴られて、「ばくだんをくれ! ジャイアンにぶっつけてぼくも死ぬ。」と妙に物騒。 | 「まあまあ おちついて。」 |
12巻「正義の味方セルフ仮面」 | テレビで「正義の味方」に夢中になったのび太。
「ねーえ、ドラえもん。正義のみかたを出してくれ。」 |
「アホか。」 |
12巻「大男がでたぞ」 | ジャイアンにいじめられたのび太、大きくなりたいと、じょうろで頭から水をかぶる。 ドラえもんに「水なんかかけたってだめだよ。」と諭されると、「大男になるくすりを出してくれ。」 |
「むりいうな。」 |
13巻「チョージャワラシベ」 | 冒頭、 「グローブがやぶけちゃった、新しいのがほしいんだ。だして!」 |
「だんだんえんりょがなくなってきたな。ほしいからって、なんでもかんでもかんたんに手に入ると思うのは考えがあまいぞ。」 |
13巻「ロケットそうじゅうくんれん機」 | 宇宙の本を読んで宇宙に行きたくなった安直なのび太、 「宇宙へ・・・」といいかける。 |
ドラえもん、先回りして「・・・いきたいから、ロケットをだせなんて、いってもだめっ」とのび太を制する。 |
16巻「ドロン葉」 | 人を化かす道具「ドロン葉」にはタヌキが必要。 のび太、早速「どうしても実験したい。タヌキをだして。」 |
「むちゃいうな。」 |
16巻「宇宙ターザン」 |
のび太の大好きな番組、「宇宙ターザン」が視聴率低迷のために打ち切りに! 困ったのび太、ドラえもんに詰め寄り、「宇宙ターザンを終わらせてたまるか。視聴率上げ機を出してくれ。さあ、出せ!」と脅迫。 |
「むちゃいうな。そんなものないよ。」 |
18巻「テレパしい」 | 口をきくのが面倒くさくなったのび太。 「口に出さなくても心は通う。ぼくがなにをしてほしいか なにを望んでいるか・・・・・・・・・、そんな機械はないかしら。」 |
「口きくのもめんどくさけりゃ、もう死んでしまえ。君にはあきれた。実にあきれた!」と激昂。 |
19巻「クイズは地球を巡る」 | クイズに不正解だったのび太。ジャイアンに殴られる。 「クイズ解答機だしてよ」 |
「そんなのあるか。」 |
20巻「アヤカリンで幸運を」 | いいことのあった人にあやかれる「アヤカリン」。 のび太は早速、 「「いいことあった人すぐさま見つけ機」を出して。」と無茶なおねだり。 |
「そんなものないよ!!それぐらい自分の力で探しなさい!!」 |
20巻「ココロコロン」 | 古びた人形を見つけた静香の思いを汲み、「持ち主探し機を出してよ。」 | 「ないよ。」 |
21巻「ひろびろ日本」 |
遊べる土地がほしいのび太。一度道具を使って日本の領土を拡張するが、潮の流れが変わって大洪水に。 「せまいままで広くできないの!?」 |
「むちゃくちゃいわないでくれ!!」 |
23巻「オキテテヨカッタ」 | 寝付けないのび太。寝ているドラえもんを叩き起し、 「夜中でもやってる本屋か、テレビを出してぇ。」 |
「うるさいなあ。」 |
24巻「火災予定報知ベル」 | 消防隊にあこがれるのび太。 「消防車とか、消防服とか、だしてよ。」と、またも単純。 |
「それはないけど。」 |
26巻「魔女っ子静ちゃん」 | 魔女になりたい静香の気持ちを汲み、人を魔法使いにする道具をねだるのび太。 | 「またまたそんな!人を魔法使いにする道具なんてあるもんか!!」 「いつものことだけど、きもはおっちょこちょいなんだよ。ろくに考えもせず、安うけあいして・・・。」 |
28巻「地平線テープ」 | 「地平線」を鉄道路線(チダイラセン)だと思っていたのび太。 本物の地平線を見たいと、ドラえもんに「地平線だして。」 |
「だせるか、そんなもん。」 |
29巻「翼ちゃんがうちへきた」 | スネ夫の「スターのサイン自慢」をひとしきり聞いたのび太。 「テレビ局のえらい人と、しりあいのパパをだして。」 |
「また、そんなむちゃくちゃを・・・・・・。」 |
30巻「ねむりの天才のび太」 | ママの説教中に寝てしまったのび太。 「ドラえも?ん。いねむりしながら、おきていられるくすりをだしてくれ。」 |
なんと不在。 いたら何と答えてくれたのだろう・・・ |
31巻「まんがのつづき」 | スネ夫の「発売前の漫画自慢」をひとしきり聞いたのび太。 「「出版社の社長と友だちのパパ」をだしてくれえ。」と泣きつく。 |
どら焼きをくわえたまま、無反応。 |
39巻「四次元若葉マーク」 |
遅刻の理由を聞かれたのび太。「学校が遠すぎるからです」と答え、廊下に立たされる。 ドラえもんに「「学校を近くへ引っ越しさせる機」だしてえ。」と泣きつく。 |
「そんなもんあるか。」 |
41巻「世界の昆虫を集めよう」 | スネ夫の「昆虫コレクション」自慢をひとしきり聞いたのび太。 「と、いうわけで、「世界の珍虫昆虫らくらくつかまえ機」をだして。」 |
「ない!!」 |
43巻「ネコののび太いりませんか」 |
ネコを拾ったのび太。「ママの動物ぎらいは、きょくたんすぎると思うんだ。きっとイヌやネコのかわいさをしらないからだよ。だからママに、動物と、つきあう楽しさを教えてあげたらと。」 ドラえもん「えらい!!よくそこまでひとりで考えた!」 のび太 「それで・・・、そのための道具、なんかだして。」 |
「そんな道具きいたことないよ。」 |
43巻「かしきり電話」 | ジャイアンリサイタルの会場探しを命じられたのび太。 「会場だしてよ。」 |
「そんなもん あるかよ。」 |
44巻「虫よせボード」 | スネ夫に「広い庭自慢」をされたのび太。 「広い庭をだして。」 |
「無理いうな。」 |
44巻「ハワイがやってくる」 | ハワイに行きたいのび太。 「どこでもドア」ではつまらない、「飛行機や船ではるばる海を渡らなくちゃ」というドラえもんの返答に、 「じゃ、飛行機か船をだして。」 |
「もっていない。」 |
45巻「うきわパイプ」 | 泳げないのび太。 「つめたくなくて、広くてすいてて、ぜったいおぼれないプールをだしてよ。」 |
「そんなのあるか。」 |
こうしてみると、実に安直にありもしない道具を考え出すのび太と、それをまた「ない」の一言で実に冷徹に拒絶するドラえもんとの、きわめてワンパターンなやり取りが見えてきます。
ドラえもんが「のび太の教育係である」という事実を思い出させてくれる一コマですね。
参考文献: 藤子・F・不二雄『ドラえもん』1-45巻(小学館)
公開開始:2010年6月27日