ドラえもんが窮地に追い込まれると、
「慌ててポケットからヘンなものを出す癖」があることは有名です。
ドラえもんのポケットから出てきたモノ
未来のロボットとは思えない、
実に20世紀的なものが出てくるようです(特にスルメが気になります)。
そこで今回は、その各シーンをリスト化してみました(08/10/20追加)。
シーン数は16 17 。意外と少ないのですが、どれも実に味があります
大長編より
巻 |
出てきたモノ |
状況 |
「のび太の恐竜」 (その1) |
ラーメンのどんぶり | 恐竜に襲われた静香とピー助を救うために「だんご!!
桃太郎印のきびだんご!!」と焦るドラえもん。「あれでもない、これでもない。キ、キ、キーッ!」と取り出したのは、何の脈略もないお正月用品であった。 どうでもいいが、「キ、キ、キーッ」という取り乱し方も酷い。 |
羽子板 |
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羽根 | ||
コマ | ||
「のび太の恐竜」 (その2) |
フォーク |
プテラノドンに追いまくられるドラえもんら5人のメンバー。 のび太「ド、ドラえもん!あれをだして、あれを。」 ドラえもん「なんだなんだなんだ。」 のび太「きび太郎印の・・・・・・」 ドラえもん「そ、そうか!!「ももだんご」 道具名すら正しく言えないひどい取り乱しよう。そんなドラえもんが取り出したのは、ランチに使える食器類であった・・・ のび太「あわてるとだめなやつ。」とバッサリ。 おそらく「このまま食べられる!」という意識が強く、思わず食器を出してしまったと思われる。思考回路がそのまま出る。 |
ナイフ | ||
ポット | ||
湯呑茶碗 | ||
皿 | ||
箸 | ||
茶碗 | ||
「のび太の恐竜」 (その3) |
「交通安全お守り」×2 |
川で漂流するのび太とドラえもん。巨大な滝が近づいてくる・・・ ドラえもん「なにかないかなにか!!」と焦るあまりに取りだしたのが「交通安全お守り!!」 本当に未来のロボットなのか。 |
不明×5 | ||
「のび太の恐竜」 (その4) |
ポット |
ティラノサウルスに食われそうになって大慌てするのび太とドラえもん。 「な、なにかないか。ないかないかないか。」・・・目もうつろに取り乱すドラえもん。出てきたのはなぜか1980年の何気ない日用品である。 |
デジタル時計(幕式) | ||
コーヒーカップ | ||
皿 | ||
「宇宙開拓史」 | タイムフロシキ | ガルタイトの宇宙戦艦に襲われるドラえもんら。 ドラえもんが「なにを!!ヒラリマントで・・・・・・。」と出したのは「タイムフロシキ」。 慌てて「あれでもない、これでもない。」と座りこんで取り出したのはなぜか中華料理店で見かける食器類であった。長旅でお腹がすいていたのだろうか・・・。 のび太「あわてるといつも・・・。」と冷静にロップルに解説をしているが、それどころではないと思う。 |
ラーメンのどんぶり | ||
茶碗 | ||
しゃもじ | ||
皿 | ||
小物器 | ||
箸 | ||
「海底鬼岩城」 | 下駄(片方) |
オバケイカに襲われたのび太を救おうと立ち向かうドラえもんだったが・・・ スモールライトを探しながら、「なにかないか、なにかないか。かんじんなときはいつもこうだ。」と、ガラクタを取りだす。 実はこのシーンの29ページ後に、ドラえもんが一発で「スモールライト」を出すシーンがある。そのときのセリフが「一発ででた!!」・・それが当たり前のはずだが・・・ すでに自分のダメパターンを認識している様子がうかがえる。 |
やかん | ||
長靴(片方) | ||
バケツ | ||
絵の具のチューブ | ||
「日本誕生」 その1 |
見た事のない秘密道具×3 | ツチダマの衝撃波を跳ね返そうと「ヒラリマント」を探すドラえもん。 「えーとえと・・・・・・。あれでもない、これでもない。」といって取り出したのは見たこともない秘密道具であった(調べたのだが分からない)。これは何なのだろう・・・ |
「日本誕生」 その2 |
ドライバー |
サーベルタイガーに襲われそうになるドラえもんら。 「ちょ、ちょっとまって。」と例によって「桃太郎印のキビダンゴ」を出そうとするが・・・出てきたのは、日曜日のお父さんが手にしそうなグッズであった。なぜ・・・ |
スルメイカ | ||
哺乳瓶 | ||
「日本誕生」 その3 |
りんご | 地底の奥深くに閉じ込められたドラえもんら。 「通りぬけフープ」を使ってしまい、その代わりとなるものを必死に探す。「えーとえと・・・・・・。」 出てきたものは、子どもの歌に出てきそうなファンシー系グッズであった。 のび太「いつもこうなんだ。ポケットをキチンと整理しておかないから。整理してあればいざという時にはサッと・・・・・・。」と説教をはじめる。 |
トランペット | ||
けん玉 | ||
「アニマル惑星」 | スルメイカ | ニムゲの戦車の侵攻に慌てふためくドラえもん。 「消防水でっぽうはどこだ。ミニ雨雲はどこだ。」と目を「#」にして取り乱す。 でんでん太鼓が出てきたのは、「雨雲」→「雷様の太鼓」という連想だろうか。いずれにしても全く使えないポケットである。 |
トイレットペーパー | ||
でんでん太鼓 | ||
「ねじまき都市冒険記」 | やかん |
「種をまく者」に追われるドラえもんら。「はやくにげられるような道具」をジャイアンに求められ、「そんなこといったって!」と取り出したものはおなじみの日用品と無関係な秘密道具であった。 しかし「スルメイカの好きなロボット」である。22世紀では貴重なのだろうか。 ちなみにこの後、のび太がスペアポケットから「なんかないかな・・・・・・。」と「ドラ焼き」「カメレオン」「ぞうきん」を取り出すシーンがある(ノーカウント)が、そのときののび太のセリフは「ドラえもんのやつ、ポケットの整とんしてないな。」・・・何も変わっていない。 どうも「片づけられないロボット」のようである。 |
トイレットペーパー | ||
スルメイカ | ||
ぞうきん | ||
評論ロボット | ||
狂時機(驚時機) |
「竜の騎士」 | 下駄 |
地底世界で恐竜に襲われたドラえもんら。「ショックガン」も「ヒラリマント」も「きびだんご」も出てこない。 のび太「まってー」 |
やかん | ||
茶筒 | ||
茶碗 | ||
傘 |
巻・話 |
出てきたモノ |
状況 |
2巻「恐竜ハンター」 | 缶詰×2 |
恐竜に追いつめられるドラえもん。自信たっぷりで「さいぼうしゅく小き」を出そうとしたドラえもんであったが、出てきたのは「大和煮の缶詰(のび太が入れた)」であった。 焦ったドラえもん、「ハレハレハレ。」と目を白黒させて取り乱し、様々なものを取り出す。 「慌てるパターン」の記念すべき第1号である。 |
水筒 | ||
バナナ | ||
食パン | ||
固形食糧×5 | ||
11巻「いやなお客のかえし方」 | 薬瓶×12 |
「こだまラッカー」をトイレに吹きかけて、「いつまでもノックの音が返ってくる」ようになってしまい、のび助も玉子もトイレに入れずに大弱り。 それを見たドラえもん、慌てて「ラッカーをはがすくすり」を探すが、出てこない。 「これでもない。あれでもない。」と懸命に探すドラえもん。 ちなみに、このネタがオチに使われたのはこれだけである。 |
まとめてみてまず驚いたのは、そのシーンの少なさにあります。もう少しあると思っていたのですが。
特に、短編にはほとんど描かれていなかった、というのは意外でした。
しかしよく考えてみると、「窮地に追い込まれて慌ててしまう」という状況設定自体が、「日常世界」の枠を超えている、ということでしょう。ごく普通の町内(東京都練馬区)で、常に絶体絶命のピンチに陥ることはあり得ないからです。このシーンが、ドタバタ色の強い初期の巻のみにしかみられないというのは妙に納得できます。
それでも、露出度が少ない割に強烈な印象(たびたび同じことを繰り返しているように見える)を受けるのは、「大長編」、そして「映画(映像)」になって読者の脳裏に焼き付いているからでしょう。映像の力とはすごいものです。
***
このリストで浮き彫りになったのは、ドラえもんの「整理のできなさ」振りです。のび太もかなりあきれている様子が分かります。
このシーンがあることで、「あ、『ドラえもん』は未来の中古ロボットだったんだ」ということを再確認できるように思います。その意味では、重要な意味を持つシーンといえます。
●おまけ
作者没後も、ドラえもんの「慌ててポケットからヘンなものを出す癖」は、しっかりと継承されていることが分かりました。むしろ、パターン化が進んでいるような印象さえ受けます(それだけF先生の遺されたものに普遍性・再現性があったといえるでしょうか)。以下、それをリストにしてみました(先述のグラフの計測からは外しています)。
巻・話 |
出てきたモノ |
状況 |
「宇宙漂流記」 | ひい木 | 巨大な星が宇宙船に接近! ジャイアン「自動星よけ機はないのか」 ドラえもん「そんなのないよ!!」といって取り出したものがおなじみの秘密道具であった。まさかここで「おせじ口べに」と「ひい木」がでてくるとは・・・ |
あべこべクリーム | ||
タッチ手ぶくろ | ||
おせじ口べに | ||
「翼の勇者たち」 | ハンマー |
トマリギの頂上に急行する必要のあるドラえもんら。「なんかないか。」とのび太を頭上に乗せながら大慌てで探すドラえもん。 そんな中、出てきたものは"いつものやつ"である。読者を大いに安心させるワンパターンぶりであった。 |
ぞうきん | ||
茶碗 | ||
はし | ||
皿 | ||
ボール | ||
「ロボット王国」 | やかん | 地球代表ロボットとして「コングファイター」と戦うことになったドラえもん。 「どうしよう!戦う道具は・・・・・・、超空間でほとんどなくしたからなあ!」 相変わらず"いつものやつ"が出てくるのには安心させられる。 |
茶碗 | ||
はし | ||
下駄(片方) | ||
野球のボール | ||
「ワンニャン時空伝」 | ダルマ | ネコジャラに襲われたドラえもんが「えーーーーっと、えーーーーっと!」と武器を探す。 またスルメイカだが、このロボットは大丈夫か。 |
スルメイカ | ||
下駄(片方) | ||
野球のボール | ||
「新魔界大冒険」その1 | お風呂用ヒヨコ |
メジューサに襲われるドラえもんら。「えーと・・・えーと!!」と取りだしたものは、やっぱり日用品。新ドラえもんになっても安心のようだ。 しかしこのところ下駄(しかも片方)が多い。 |
飴玉 | ||
コマ | ||
下駄(片方) | ||
孫の手? | ||
「新魔界大冒険」その2 | ドラ焼き | 寒さで気絶するドラえもんのポケットを漁るのび太。 出てきたのはやはり日用品。「もう・・・、ちっとはポケットの中整理しろよ。」もっともである。 「ねじ巻き」を参照いただくとわかるが、のび太がポケットをいじると「ドラ焼き」が出てくるようである。ドラえもんを思うのび太の気持ちの表れであろうか・・・? |
枕 | ||
靴下 | ||
野球のボール | ||
「新魔界大冒険」その3 | 身代り紙人形 | 悪魔の追手から逃げるのび太とドラえもん。 「どうする どうする!?」と大騒ぎするが・・・ |
計量スプーン | ||
サイコロ(もしかすると「フリダシニモドル」かもしれない) | ||
巾着袋 | ||
うちわ | ||
「緑の巨人伝」 | スモールライト(故障中) | 植物星人と戦おうとするドラえもんら。 故障中の道具ばかりを出し、「みんな使えなーい!!」と逃げる。 さりげなく"いつものやつ"がまぎれているのが楽しい。 |
ヒラリマント(故障中) | ||
電光丸(故障中) | ||
風神うちわ(故障中) | ||
ドラ焼き | ||
野球のボール |
・・・感動的ですね。ぜひ、これからも同じ世界観を繰り返していっていただきたいと思います。
参考文献:藤子・F・不二雄『ドラえもん』1-45巻(小学館)および『大長編ドラえもん』1-17巻(小学館)、藤子・F・不二雄プロ『大長編ドラえもん』18-24巻(小学館)、岡田康則「のび太の新魔界大冒険」「のび太と緑の巨人伝」『映画ストーリー ドラえもん』(小学館)
公開開始:2008年10月13日