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証言


帰宅後、男は戦慄を覚えた。

楽しみにしていたケーキがなくなっていたのだ。

 

机の上に置いておいたのに。

犯人は誰なのだろうか。

 

なお、男はアパートに一人暮らしの26歳独身であるものとする。


 

男は、必死の聞き込みを開始した。

犯人を探せ!

 

・隣の家のおばさんの証言

「そのときは私、パートに出ていたから、知らないわ」

 

・野良猫の証言

「ニャー(誰が知るかよ)」

 

・飼っている金魚の証言

「・・・(目を開けたまま寝ていた)」

 

さて。これで犯人は分かっただろうか。

 分かる訳ない。

 

次。

・アパートの大家さんの証言

「うーん。鍵は閉めていたんだろ?」

 

・男の恋人の証言

「知るかボケ。」

 

・近所の子供の証言

「ポケモンカード」

 

・管理人(このサイトの)の証言

「俺じゃない。」

 

・携帯ショップの店員の証言

「カメラ付ですね。」

 

・新聞配達員の証言

「夕刊を取ってらっしゃらないんですよこの人。」

 

・某公共放送の集金員の証言

「この方は銀行振込です。」

 

・通りすがりの男性会社員の証言

「私が知っているわけないでしょう。」

 

・通りすがりのOLの証言

「あなた誰ですか。」

 

・警察の証言

「あなたの家を常に見張ってるわけじゃないからねぇ。」

 

・郵便配達員の証言

「あなたの家のポスト、1階にあるのでねぇ。」

 

・隣人の証言1

「私は昼間は勤めに出てますんでねぇ。」

 

・隣人の証言2

「うーん・・・昼間のことは分からないなぁ。」

 

・下の部屋の住人の証言

「何も異様なことはなかったですけど。」

 

・上の部屋の住人の証言

「え?別に何も・・・」

 

***

 

・ゴキブリの証言

「俺らは喰ってないよ。最近は。」

 

・蚊(メス)の証言

「私は血にしか興味ないから。」

 

・蝿の証言

「ケーキ、腐ってないじゃん。ヒトの食い物じゃん。」

 

・ダニの証言

「しらないよ。」

 

***

 

だめだ

埒があかない。

 

誰も、

誰も味方になってくれない。

 

そりゃそうだ。

「ケーキ盗んだの誰ですか?」

って聞いてるんだもんな。

最後のほうなんか、

「ケーキ盗んだの、アンタ?」

って聞いちゃってたからな。

 

***

 

とにかく、

 

ケーキは見つからない。

 

 

男は、

憂さ晴らしにビールを飲むことにした。

 

もちろん、

冷蔵庫を開けて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはケーキ。

 

そりゃ 6月だもんな。

ケーキ出しっぱなしじゃ腐るよな。

 

 

 

 

 

男は、独りで納得して、ケーキを食べた。

ビールを飲みながら。

 

 

 

 

 

 

 

・ある友人の証言

「お前は、自分の失敗を他人になすりつける癖があるんだよ。」

 

 


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