仮説物語2
・・・・・・
3200歳のりんご小父さんが、
ボクたちに話をしてくれたんだ。
●桃太郎
むかし、むかし、ある所に、おじいさんとおばあさんがおったと。
おじいさんは籠を担いで山へ芝刈りに、
おばあさんはドラム式洗濯機を担いで川へ洗濯に行ったと。
おばあさんが川で非リン系の洗剤を使って洗濯をしていると、
川上から、
どんぶらこ どんぶらこ
と、大きな桃色の桃が流れてきた。
おばあさんは吃驚(びっくり)して、
「あんれまぁ、大きな桃だこと。食べでがあるわ」
といって、その桃を担いで持って帰ったと。
洗濯機は置いて帰ったらしいですけど。
夕方。おじいさんが帰宅。
夕飯。食後。
「おじいさん、食後に大きな桃を食べましょう」
「こればあさん、これまた大きな桃だねぇ。」
「ご近所にもおすそわけしないといけませんねぇ。」
包丁。
桃。ざっくり。
あ!
二人ともびっくり。
中には・・・
以下作者取材のため休載。
●三匹の子豚
三匹の子豚がいた。
長男がチャーリー、次男(二男)がポーリー、三男がカーリー。
ある日。母親が言う。
「あんたたち、独立しなさい。」
「はーい。」
家を出る。
新しい家を探す。
三匹は道中で喧嘩をした。些細なことが原因。
気の強い長男は、こう言った。
「俺はお前らとは一緒にいたくないね。あばよ」
売り言葉を買うのが得意な次男は、こう言った。
「俺もお前らとは一緒にいたくないね。あばよ」
気が弱いが優しい三男は、こう言った。
「え、そんなの、いやです。」
三男の立場は弱かった。
すなわち、ばらばらに住まうことになったのだ。
三匹は山を見つける。兎と亀が競争をしたとかいう、伝説の山だ。
近くの林ではおじいさんが灰を撒いて桜を咲かしているし、
遠くの森では今日も赤頭巾を被った女の子の姿が見える。
また、海では浦島太郎が亀を助けていた。
とにかく、ここはそういう所。
長男チャーリー。
動くのが面倒なチャーリーは、
減反で放置状態の近くの畑から藁を見つけてきて、
山の麓に藁葺きの家をこしらえた。
次男ポーリー。
少しは動いたほうがいいと思ってるポーリーは、
近くの新興別荘地の工事現場から木材を調達し、
山の中腹に木造の家をこしらえた。
チャーリーが茶化す。
「やい、ポーリー。働き者だねぇ。まだ家を建ててるのかい?」
「うるせえよ」
三男カーリー。
働き者で用心深く、遠くの景色を見ることが好きなカーリーは、
石をどこからか調達し、
山頂にレンガの家をこしらえた。
ポーリーが茶化す。
「やい、カーリー。働き者だねぇ。まだ家を建ててるのかい?」
「僕はこれでいいんです」
さて。森には狼が住んでいた。
狼の大好物は、肉。
山の麓の藁の家。豚の香り。
しめしめ。
狼は夜を待った。
夜。
狼。ドアをノックする。
コンコン。
「誰ですか」 チャーリーは答える。
「あのぅ、新聞ですけど」
「間に合ってます」
「そう言わずに」
「いいってのに」
見たいテレビがあったのだ。構ってられない。
チャーリーは、そのまま寝そべってテレビを見ていた。
・・・
狼はお腹が空いていた。
我慢できない。
唐突にこんな台詞を言う。
「俺は狼だ」
突然鋭い声を聞き、チャーリーは焦った。
「は?何を突然・・・」
ビュゴオオ
狼は突然、藁の家を吹き飛ばした。
チャーリーは慌てて家を飛び出した。
中腹のポーリーの家へ慌てて逃げる、逃げる。
狼も後を追う。
「助けてくれ、後生だ。」
兄弟のただならぬ奇声に異様なものを感じ、
ポーリーは兄を中へ入れてやった。
「どうしたんだい、兄さん。」
「お、狼が来たんだ。」
「ええ!大変だ。どうしよう。」
「戸締りをしてくれ。」
ピンポーン。チャイムの音。
「ど、どなたですか」ポーリーは言う。
「郵便ですよ」と狼。今日は日曜なのに。
「ポストは窓の下にありますよ」
「郵便受けに入りませんけど」
・・・・・・
狼は腹が減っている。もう我慢できない。
ビュゴオオ
ビュゴオオ
狼は突然、木で出来た家を吹き飛ばした。
二匹の子豚は大慌て。
急いで山頂にいる弟のところへ・・・
山頂。
三男カーリーは、お風呂に入っていた。
ピンポーン。
ピンポーン。
「おや、来客だ。」
髪の毛だけセットして、
監視カメラで外の様子を伺うと、
そこには血相を変えた二匹の兄たちがいた。
裸のまま急いで外に出る。
「どうしたの?」
「実は、かくかくしかじかで・・・」
「え!それは大変。さぁ、早くお入りなさい。」
狼は追いつく。
今度は有無を言わさず息を吐く。
ビュゴオオ
ビュゴオオ
ビュゴオオ
びくともしない。
ビュゴオオ
ビュゴオオ
ビュゴオオ
監視カメラを覗く。
三匹は、ずっと心配そうに事の成り行きを見守っていた。
やがてこの家が安全であることを知ると、
元々口の悪い兄二匹、
こんなことを言ってしまった。
「やーい、狼。悔しかったら家の中まで来てみやがれ」
狼はピンとくる。
そうか。中に入ればいいんだ。
煙突がある。
煙突へ上る。
三匹の子豚は大慌て。
そうだ、煙突の下に釜を置いて、釜茹でにしよう。
いや、待てよ・・・
以前、僕たちみたいな三匹の子豚が
狼を懲らしめた話があったみたいだ。
そのとき、狼は釜茹でされて死んだらしいけど、
今、狼は貴重な生物らしいし、
規制が厳しくて、殺しちゃいけないことになってる。
殺したら、僕らが悪者にされかねない。
正当防衛のはずなんだけどなぁ・・・
もっとスマートな方法は・・・
誠意を持って話し合うか。
そうすれば、きっと相手もわかってくれる・・・
んなわきゃねーな。
デモをするか。
「狼の横暴を許すな」とか
「食べるのハンターイ」とか。
「豚にもジンケンはあるんだぞー」とか。
うーん・・・・・・・・・
報道されなきゃ意味がないなぁ。
しかも三匹だからなぁ。30万匹ぐらいに水増ししなきゃ。
というか、
マスコミに つて がないや。
あ、そうか。逃げればいいんだ。
「戦うより、逃げろ」が最近の風潮らしいし。
狼が煙突へ入っている間、
三匹の子豚たちは一目散に逃げていった。
狼から逃げたともいえるし、あるいは・・・。
狼は頭から思い切り床へ落ちて、暫く意識を失った。
やがて正気に戻ったが、何をしていたのかすっかり忘れてしまった。
その後、犬のお巡りさんに不法侵入罪で逮捕されたとか。
子豚はどうしたかって?
大昔、兎が狸を懲らしめたという伝説の山の頂上で、
いつまでも三匹仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。