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増殖


助けてくれ

 

俺が

 

2人いる。

 

1人は、ここにいる。

 

もう1人の俺は、隣の部屋にいる。

 

俺が本物だと思ってたのに。

 

あっちは俺のことを偽者というんだ。

 

自信がなくなってきた。

 

もう3時間以上も論争を繰り返しているんだ。

 

俺、誰なんだろう。

 

そんなとき、ノックの音が。

 

あ!

 

2人の俺は叫んだ。

 

俺がいる。

 

3人の俺同士は、

侃侃諤諤と議論を戦わせた。

 

「俺が俺だ」

「俺が俺だ」

「俺が俺だ」

 

ノックの音。

 

あ!

俺が増えた。4人の俺。

 

喧喧囂囂、もはや収集のつかない議論。

 

ノック・・・

あ!

 

ノック・・・

あ!

・・・

 

・・・

100人の俺。

俺は、俺が誰なんだか訳がわからなくなってしまった。

俺も、俺が俺なんだか何なんだか訳が分からぬ。

俺だって、俺が誰だか・・・

 

何しろ、全て俺なのだ。

誕生日はもちろん、自分しか知らない秘密も知っていた。

3日前に腐った弁当を食べて以来、腹を壊していることも、皆知っていた。

 

困った事態だ。

俺がこんなにいるとは。

 

俺は、言った。

「なぁ、誰が俺なんだい?」

 

俺達は、答えた。

「俺さ」

 

一人の俺が、溜まらず叫んだ

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

最後に現れた俺だった・・・

 

***

目が覚める。

男は、自分が一人であることを知ると、ほっとする。

ほっとはしたが、なかなかいい気分になれない。

 

今日で、100人目か・・・

男は、浮かない顔をしながら、独り言を呟いた。

 

その日の夜、男は101人目の俺に出くわした。


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