痔には「切れ痔」「いぼ痔」「穴痔」・・と様々な種類がありますが、痔瘻はその中で、俗にいう「穴痔」。

お腹を壊したときなどに、肛門の粘膜のポケット(肛門小窩)に細菌が入り込み、それが肛門周囲の皮膚に侵入して炎症を起こし、肛門周囲膿瘍という極めて痛い膿(強烈おでき)になるのが痔瘻のはじまりです。

膿が出てから(排膿)、しばらくすると「瘻管」という膿の通り道が形成されます。これで、立派な痔瘻の完成です!!

一度痔瘻になると、肛門周囲膿瘍を繰り返し(私の場合は半年で8回は膿ができました)、痛いし集中力は奪われるし、なんとなく体調は悪いし、確実にQOL(生活の質)を低下させる病気であることを痛感しました。

肛門周囲膿瘍とそのあとの排膿によってできた穴(傷?)は適当に皮膚が塞ぐので、一見、治ったように見えるのですが、瘻管は決して自然治癒することがなく、同じところから何度も膿瘍ができて排膿を繰り返します。見事に同じところから何度も膿が出てくるので、思わず感動(?)するほどです。

そう、痔瘻は、根治するためには手術しかないという厄介な疾患なのです。

根治せずに放置すると、複数の瘻管が形成され、これが枝分かれして網目状になることもあります(複雑痔瘻)。こうなる前に手術に踏み切る必要があります。さらに酷くなると「痔瘻癌」という予後のかなり悪い癌につながることもあるそうですから、発見されたらなるべく早期の治療を行いましょう・・・。

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ちなみに肛門周囲膿瘍は、「え?痔って肛門にできるものでしょ?」という知識でいると、なかなか「痔のできかけ」ということに気づきません。私もそうでした。

明らかに肛門とは違う場所に(といってもお尻なんですが)、巨大なおできがある日突然できるのです。それは単に「あー、お尻のおできだ、いやだなぁ・・」と思うだけ。

私の場合は幸いにして、膿瘍が皮膚の浅いところでできたため、強烈な痛みを覚える程度で済んだのですが、この膿が肛門周囲の深い部分、ないし直腸周囲で発生した場合(後者は直腸周囲膿瘍)はかなり悲惨です。

具体的には、39から40℃のレベルのものすごい高熱が出て、場合によっては敗血症やガス壊疽を起こす危険性もあります。こういった場合は即入院、緊急切開で排膿して、ただちに処置を施す必要があります。

ああ・・書いていて憂鬱になります。怖い怖い。

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シンプルな痔瘻予防法は、一番最初に書いた、<お腹を壊したときなどに、肛門の粘膜のポケット(肛門小窩)に細菌が入り込み・・・>という発生機序にヒントが隠されています。

要するに、お腹を壊さないこと。これに尽きます。軟便は肛門粘膜のポケットに入りやすく、固い便はポケットを素通りする・・・これは物理的な法則です。

水ではなく、個体を流せばポケットをスルー・・・これが分かりやすすぎる痔瘻予防のポイントなのです!

私の場合は完全にストレスで下痢をしたときに、痔瘻を喚起せしめてしまいましたが、普段から「お腹を壊さないように」生活することが、痔瘻を起こさない唯一の予防法と言ってよいようです。