[うらうつ。総本部へ] [インデックスへ]

ただほど高いものはない—当選ブギ


【当選商法】(とうせんしょうほう)—予め「当選」を仕組んでおいた抽選を引かせ、当選した客(カモ)を称賛することで気分を高揚させ、その勢いで高額な商品や役務等の購入 (多くは、高額な解約金等で、やむを得ず1年程度の定期的な購入を迫る)を促す商法のこと。「福引商法」「おめでとう商法」「2等商法」とも。特別な優位性を演出することで消費者に優位誤認をさせ、結果として高額な契約を迫る商法であることから、国民生活センターは当該商法への注意喚起を再三発布しているほか、 この商法によって総務省から業者が行政指導を受けた事例もある。いわゆる問題商法の一。

<場所>
大規模ショッピングセンターやスーパーマーケット、スーパー銭湯、ゲームセンター、レンタルショップ、映画館など幅広い層の人間が集まる商業施設の、玄関前やエスカレーター付近、広いスペースなどに特設ブースを設けて実施される傾向にある。こういった施設は日常空間とは隔絶されており、ただでさえ正常な判断力が鈍りやすい。さらにこれらの施設では、日頃から「謝恩くじ」「福引セール」などを実施しているため、あたかもその商業施設が主催しているくじである、 すなわち信用できるイベントである、と消費者に意図せずとも誤認させることで、警戒心を解くことも比較的容易である。

<手法>
(1)「素敵な賞品が当たるくじをひいてみませんか」と特設ブースで勧誘。大型SCで実施する場合は、「駄菓子」「風船」などの代物で子どもの興味を引き付けるケースもある。
(2)くじのランナップ。
1等は、「自分ではすぐには買おうとは思わないが、当たったらうれしいな」と思うもの。中型の液晶テレビやロボット掃除機などが該当する。原則、当たらない。
2等は、「聞いたことはなんとなくあるし、まあ当たったらもうけもんかな」と思えるレベルのもの。ウォーターサーバーやBSチューナー、IP電話機の無料レンタルのほか、有線放送加入権などが当てはまる。最終的には、これらを契約させるのが狙いである(※1)」。
(※1)4人家族が引けば、家族のうちだれか1人は2等が当たるように予め仕込まれているのが普通。 3等は、駄菓子やティッシュなど、いわゆる「参加賞」。2等よりも当たらないのが特徴。 4等は、当該のくじが正当である(※2)ことを示すための証明書のようなものである。
(※2)4人家族が引けば、2等の1名を除いて全員はずれということがよくある。当たった一人を家族が勧誘員と一緒に「すごい」と褒めれば、当たった本人は喜び、引っかかる確率が上がる。
(3)2等の商品は、「○○の無料レンタル」と言う形態をとることが多い。携帯電話等でよく見られる、「基本料無料、定期使用料徴収、一定期間は高額の解約手数料」という商法である。 ウォーターサーバーを例にとると、「ウォーターサーバーは無料レンタルだが、ボトル入りの水は定期購入が必要で、1年未満の解約の場合は違約金、若しくは高額のサーバー引き取り料を請求される」という契約を結ぶこととなる。
(4)せっかく当選したのだから、と高揚した気分のうちにすぐに契約書を書かせる(正常な判断の機会を奪い、即断即決させる)手法をとることが一般的。 「その場で契約書を書かせる」ことで、解約に当たっての心理的なハードル(※3)を上げるのが狙いである。
(※3)さらにクレジット支払にしてカード番号を最初に押さえることで、消費者に心理的な足枷をはめる(クーリング・オフや解約がより面倒くさいと思わせる)。
(5)特定商取引法上のクーリング・オフ期間は、契約書面を受け取ってから8日間。すなわちくじを引いた日から8日間。契約した商品が届くまで1週間程度かかるので、いざ商品が届いてから「あれ?やっぱりおかしいぞ。返品しなくては」と思っても法定のクーリング・オフ期間を過ぎてしまい、高い契約解除料を支払う必要が生じる。あるいは諦めて、所定の期間(1年〜2年)、定期使用料を支払う、という羽目になる。

<問題点>
(1)「無料」と言われて契約するが、実際は何らかの「定期購入」が求められる(ウォーターサーバーであればボトル水を、BSチューナーであれば放送視聴料を、といった具合)。さらに1年や2年といった期間の「契約縛り」があり、短期間で解約した場合は高額の「解約手数料」や「返品代金」を徴収される。これは、 金銭の流れにおいて「月々X円、Y回払いのローン契約」と実質的には何ら変わることのない契約である (高額な解約手数料が金利に該当し、解約しなければこの「仮想金利」を支払う必要はないが、解約に足枷が嵌められるだけのペナルティという意味ではまさに金利的な「実借入プラスアルファの支払いが求められる」という契約である、という意味合いを持つものである)。こういった手法そのものは携帯電話などでお馴染みの商法であるが、導入部では「無料」を謳い、最終的には高額の疑似ローンを提供するという点で、消費者が業者の意図を誤認する確率は高くなる。つまり早い話が「消費者を誤認させて、高額 (支払えなくないというところがミソである)の疑似ローンを組ませる」というビジネスモデルであるという点が、倫理的な面で問題視されるところである。
(2)即断即決で契約書の締結を迫られるため、「疑似高額ローン」という著しく消費者に負担を強いる商法でありながら、その負担を吟味しないまま消費者が契約をしてしまい、実際に当該の商品が届き、定期・定額支払いを行うようになってはじめて、負担を行っているのが自分だけであると気づくケースが多いという点も問題である。

<対策>
(0)絶対に「無料のくじ」には参加しない。
→世の中は、無関係の人に何かを施すほど甘くはないと心得る(怪しい投資話と一緒で、「儲かる話」を人に営業している時点で必ず罠があるのです。儲かるなら自分でやればいいのですから)。商業施設主催のくじは、基本的には「何かを買った分の還元(例えば1000円の買い物で1枚くじ引きなど)」であり、「何もしなくても勝手に賞品が当たる」などという虫のいい話はそうそうあるものではありません。
(1)くじをひいてしまったら—その場で契約をしないようにする。
→最初に「無料」と言っていたのに、「お金がかかります」という話が出たら、「お金がかかるということは聞いていないので、帰ります」といって帰るのがこうした商法に打ち勝つ鉄則。
→それでも食い下がってきた場合は、「つまり、高額の疑似ローンを組めということですよね。年間に直すと○○円ですか。一度、契約書を家に持ち帰って確認したいと思います。後日の契約でなければ、今日は帰ります。当選の権利はいりません」と言 う。
→それでも勧誘される場合は、スマホやボイスレコーダーを使ってやりとりをすべて録音する(相手には「契約の説明は大切なことなので、申し訳ありませんが録音させていただきます。よろしいですね」と一言了解を取るとよい)。
(2)契約してしまったら—自宅で即座にクーリング・オフの準備をする。
→まずはサービスの取次者向けに、はがきを作成します。以下はその例。

この文面は控えを取っておき、そのうえで、
「特定記録郵便」や「簡易書留」等の、発信日が証明される郵便物として送付する(これで相手から返信がなくても、契約の意思を示したことになる)。

→クレジット契約を結んでしまった場合は、クレジットカード会社にも同様のものを送付する。

まともなクレジットカード会社であれば、その結果(一般的には、「契約解除通知を受け、調査を行いましたが、該当の請求はありませんでしたのでご報告します」)が数か月以内にカード名義人住所宛に親展で届くはず。こちらが催促しない限りいつまでもアンサーの届かない会社は危険なため、カード解約も検討するとよい。

(3)契約してしまったら—宅配の受け取りは「拒否」する。
→当該サービスの宅配便の受け取りは一切拒否 でよい。配達員に「商品の受け取り拒否」をする旨伝達し、必要な手続き(署名押印を求められる場合が多い)を済ませれば、原則として受理の義務はない。配達員が知己であれば、事前に「○○社の商品は受け取りを拒否するので、書類だけ届けてください」と連絡しておくと親切だろう。

<相談や通報>
このような商法に出会って困った場合は、公的機関を中心に相談する。まかり間違っても、その販売会社のお客様センターや相談ダイヤルには連絡をしないこと(企業のお客様相談窓口は、もちろん消費者の為という部分もありながら、本音は企業内の問題が外部に漏れないようにするという意図もあるのが普通。ミイラ取りがミイラになるという言葉もあるので、相手の土俵に立たないことが極めて重要)。
(1)いの一番は、地方公共団体の「消費生活センター」または、「国民生活センター」へ相談する。特定の相談事例が蓄積すると、問題化してくれるようになり、新たな被害を未然に防ぐための役に立つ。
(2)さらに、こういった商法の出店を安穏と許可しているSC、銭湯に通報するのも一手。その場合は、SCや銭湯の店長充てではなく、それらを管轄するグループ本部に連絡することが肝心である(およそチェーンの店長というのは中間管理職なので、最終決済権はない)。方法としては、 それこそSCチェーン本部の「お客様センター」充てに、「貴グループの○○店に△月△日に行ったとき、当選商法のブースが開かれていた。すでに消費生活センターにも相談しているが、貴社はこういった商法を行うブースの出店を認識なさっていらっしゃるのか。実はすでに近所では怪しいと噂になっているので、お節介ながらお伝えまでしました」と伝えるだけで、効果がないことはない。このときのポイントは、 クレーマーのように本部を怒鳴りつけるのではなく、あくまでも「気になったのでご報告まで」という風情で相談をしてみるのがよい。イメージを重視するグループとしては、風評被害回避のために、「相談事例が蓄積すれば」何らかの対応をとる場合もある。なお、ここでは事例の蓄積がきわめて重要なのであって、巨大なチェーンに一人が連絡したことぐらいで何かを解決させよう、と意気込むのは愚かというもの 。自分だけでなんとかしようとすると、バカを見る。


[うらうつ。総本部へ] [インデックスへ]