FFのイントロつき戦闘曲について

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ここでは、FF(ファイナルファンタジー)の有名なイントロ(ダダダダダダドド、ダダダダダダドドでお馴染み)が流れる、植松伸夫さんのバトルシーンの曲(戦闘曲)について考察する。


■「FFのイントロ」の定義
初期のナンバリングFFにおいて、主に通常戦闘の開始時に流れる、2小節のイントロ。
パーティが敵にエンカウントした瞬間、「ララララララソソ」のベースラインが繰り返され、「これから戦闘が始まるぞ」という緊張感を高める役割を果たしている。

■「FFのイントロ」の使用箇所
FF1〜6までの通常戦闘曲「すべて」に使用されたため、少なくともファミコン世代、スーファミ世代は「FFのバトル音楽と言えばこれ」で耳が覚えてしまっている。

PS世代となるFF7・8からは通常戦闘から唐突にこのイントロが消滅したため、積年のファンは驚きを隠せなかった。しかし、ボス戦の曲 (一部)にはこのメロディーラインがひっそりと仕込まれており、「FFのバトル音楽らしさ」に花を添えたのである。結果的にFF1〜9では、ストーリーの中で必ずどこかでこの「イントロ」を聞くことになる。やはり、「FFのバトル音楽といえばこれ」なのである。 我々は、そう学習してしまったのだ!

■「FFのイントロ」使用曲とそのレビュー
この項のメインである。すべて「サウンドトラック」収録の原曲を聞きながら執筆している。よくよく聞いてみると、「意外な事実」が判明するかもしれない。「え?」と思ったら、ぜひ「サウンドトラック」などと対照させながら確認してみてほしい。

●FF1「戦闘シーン」
記念すべき第1曲め。すべてはここからはじまったのだ。通常戦闘のみならず、すべての戦闘(ラスボスを含む)でこのBGMが使用される。 駆け上がるようなエンカウント音と同時に(重なるように)、イントロ音が挿入される。イントロは一般的な「ララララララソソ」ではなく、「ソソソソソソファファ」と音程が1つ低く、若干「暗さ」を感じる。曲全体は、 いかにも正統派な中世ファンタジー風の締った(まとまりのよい)印象である。さすが第1作目。ちなみに後述するが、FF4「バトル2」のモチーフにもなっている。

●FF2「戦闘シーン1」
通常戦闘専用曲。3音とは思えない、音の重なりを感じるBGM。前作よりもエンカウント音が高音であり、さらにイントロ自体も1音上がって(ソファ→ラソ)前奏は明るくなったものの、 続くメインの曲調全体はどこか暗めである。さらにその「暗さ」を増幅させるかのように、特に22秒以降は幻惑の世界に迷い込んだかのような怖い(おどろおどろしい?) 曲調に収斂していく。当時のFFは、 DQと比して、確かに全体的に「暗かった」ことを思い出す。そう考えると、最近のFF(特に8以降)が明るすぎるだけなのかもしれないが・・・。

●FF3「バトル1」
通常戦闘専用曲。3音+タム、ドラムという構成で、メロディー全体がにぎやかになっている。 エンカウント音に続き、イントロ、その最後にタムが鳴るのは初見では「おっ」と思わされる迫力がある。さらにドラム音がベースに曲が進展していく。ファミコンというハードの性能に真っ向から挑戦したことが伺える(ファミコン初期のメロディとは明らかに、 「質的に」違うのが分かる)。25秒あたりで曲が変化するときに、もう一度イントロ音が挟まる構成が格好良い。1・2とは違って明るい曲調に仕上がっており、全体を通して悲壮感は少ない展開だ。何というか、「呑気」というか、牧歌的な仕上がりである。

なお、有名な話だが、イントロ後の出だしのメロディラインは松任谷由実さんの『真夏の夜の夢』の1フレーズめとまったく一緒である。 これは偶然の一致というやつ(ちなみにこちらの方が世に出たのは先である)。カラオケかなんかで聞くと毎回、この「バトル1」を思い出すのは私だけではあるまい。

●FF4「バトル1」
通常戦闘専用曲。駆け上がるようなエンカウント音→ギターのイントロと続き、トランペットが主旋律、バイオリンがベースの軽快なリズムの一曲になっている。FCまでとは打って変わって「スーパーファミコンらしさ」が全開で、オーケストラ調の優雅で明るいメロディに仕上がっている。FF1〜3までの通常戦闘曲はどこか「ゆっくり」な印象だったが、この曲は全体的にテンポが速く、リズミカルになった。これだけスピード感があるのは、間違いなくATB (特許のバトルシステム)導入による影響が大きいのだろう。この曲の速度によって、バトルの緊張感や「わくわく感」がさらに掻き立てられている印象を持つ。

●FF4「バトル2」
基本的には中ボス戦専用曲。バイオリンが主旋律、トランペットがベース(「バトル1」とはちょうど逆の構成)で、スピード感・緊張感・爽快感がさらに高まっている。 より鋭敏さを増したエンカウント音に続くギターのイントロは、よく聞くと「ララララララソソ」ではなく「ミミミミミミレレ」とわざと低くしているので、「入り」の重厚感も増している。 この何とも言えない格好良さは、まさに「中ボス戦」のお手本のような曲だと思う。

・・・と、ここでさらによくよく曲を聞いてみると、スピードが違うので聞き逃しがちだが、最初のメロディの「入り」は、FF1「戦闘シーン」のメロディと一緒 であることに気がついた。 「ララララララソソ」で始まらない低めのイントロもどことなくFF1の印象に近い。

そう、聞けば聞くほど、この曲は明らかに「最初のFFの戦闘の曲」 の正統派アレンジであるということに気づく。「これからはスーパーファミコンの時代である」ことを寿ぐかのように。面白いなぁ。

なお、名作と名高い『スーパーマリオRPG』の「対クリスタラー戦」でも、かの下村陽子さんのアレンジで(ほぼ原作通りの曲調だが)本曲を聞くことができる。最初はそのまま移植したのかと思ったが、サウンドトラックなどで聞いてみると微妙に音が違う (若干低い)。打ち込んでいる機械の違いというよりは、明確なアレンジと判断してよいかと思う。実際のプレイ中はクリスタラーを取り巻く4つのクリスタルをどうにかして封じ込めるのに必死で、だいたいは「キラリりゅうせいぐん」やら「ダークスター」やらでメンバー全員が瀕死になるところをピーチで回復することに夢中になっているから、この名曲が聞こえてきても「お、FFと一緒だ。かっけー」くらいにしか思えないはず。こうしてサントラでじっくりと鑑賞できるのは非常にありがたい。

●FF5「バトル1」
基本的には通常戦闘専用の曲。電気的なエンカウント音を受けてからの妙に落ち着いたイントロが却って緊迫感を高め、 さらにイントロのベース部分を貫く「レソシミ」がそこはかとない緊張感を煽り、一気に主旋律に突き進んでいくテクニカルな構成。短い中に、どこか後に残るほろ苦さを含んだ味わい深さがある。よく聞くと、曲の最初のほう(7秒〜)で再度イントロのメロディがベースとして登場する箇所があり、さらに戦いに飛び出すような「勢い」をつける役割をしている。

●FF6「戦闘」
通常戦闘曲。霧のようにもわっとしたエンカウント音からギターで切り刻むような速度のイントロ。そのまま同じギターをベース音に、トランペットで一気に駆け上がっていく、ロック調の戦闘曲。 出だしとベースギターのテンポが速いので曲単体で聞くと「かなり速い」ように感じてしまうのだが、 よく聞くとトランペットの主旋律はむしろ落ち着いた曲調。「テンポ感と実際のスピード」のギャップが味わい深い。「機械文明」が登場したFF6にぴったりのイカつさのある曲。 ロック調なのは、歴史的に見て「FF7路線が顔をのぞかせている時代」とみてよいだろう。

FF6「決戦」
ボス戦の曲。まず5秒~9秒で刻むようなイントロが2回。16秒~20秒で再び2回。そして畳みかけるようにして21秒~30秒でイントロ+アレンジが2回。1曲が53秒という非常に短い曲だが、その中にドラマがある(計6フレーズもイントロが流れるのだ)。スーファミのボス戦の中でも屈指の格好良さだ。

●FF7「更に闘う者達」
今までのFFの戦闘曲とは一味もふた味も違う、プログレロック感全開の曲。ただただ格好よくて思わず背筋が伸びる。

FF7では通常の戦闘曲からイントロが消滅。その代わり、中ボス戦(ジェノバ系を除く)で使用されるこの曲の途中で、イントロのフレーズが頻回に挿入される(1分3秒〜34秒で、イントロのフレーズ&そのアレンジが3回繰り返し)という、手の込んだ演出が・・・。これによって、途中からどこか「懐かしさ」も感じる曲調になっているのである。

●FF7「The Birth Of A God」
ラスボスの手前、「リバース・セフィロス戦」だけで流れる曲。前奏が流れて26秒〜、主旋律に入る前にイントロ挿入。さすがこのイントロが挟まることによって、さらに闘いを盛り上げる演出がなされている。

曲のフレーズ(26秒~31秒)にどこか懐かしさを覚える・・・と思ったら、FF4のラスボス(ゼロムス戦)「最後の闘い」(41秒〜、曲調が変化する前座部分)と同じフレーズが使われているのだ。こういうのを探すのもFF音楽の楽しみの1つと言える。

●FF8「The Extreme」
ラスボスである「アルティミシア戦(最終形態)」での一曲。ピアノを主体とした不思議な前奏(オープニング曲である「Liberi Fatali」とシンクロしている)が1分38秒も続き、その後1分39秒から1分54秒まで15秒間イントロが挟まる(徐々に盛り上がりながらベースラインで6フレーズも続く)。ただし「ララララララソソ」ではなく、「レレレレレレドド」である。 通常より4音と思い切り低いので、新鮮さとともに、どこか「これからの闘いに向けた緊張感」も表現されている印象。曲全体はとても瑞々しく、合間合間で端々に含まれるアルティミシアの「台詞」と相俟って、美しいラストバトルになっていると思 う。

ゲーム中、イントロの入るちょうどこのタイミングで「ショックウェーブパルサー」などを使われてだいたい味方のHPが「1」になっていたり、その結果としてリミットブレイクが発動したりしていて「それどころではない」かもしれないが、タイミングよくこのイントロを聞けると否が応でも戦闘への気持ちが駆り立てられる。 私自身は、この曲の間、リノアが回復にいそしんでいる間にゼルが「ラッシュパンチ」を繰り返している印象が強い・・・(ゼルの「ラッシュパンチ」が地味に使える技だから致し方ないのである)。

物憂げな前奏とは打って変わって、イントロ後は一気に曲が「爆発」。まさに植松節炸裂といったところ。曲が最高潮に盛り上がったところで、3分26秒、いきなりピアノ主体のメロディラインに変化する(FF8の主題である「魔女」テーマ回りで使われる変調の曲)。そしてその曲調のまま、曲の後半(3分47秒〜4分7秒の20秒)でイントロが再びベースラインに8フレーズ(イントロ[レレレレレレドド×2]→イントロアレンジ[レレレレレレレドド、レレレレレレレミミ]→イントロ→イントロ→イントロ→イントロアレンジ→イントロ→イントロ)も入り、再び主旋律へループするという構成になっている。この多様なこの変節ぶりが、お見事。

●FF9「バトル1」
久し振りに通常戦闘曲に復帰したイントロ。さすが「原点回帰」を標榜するFF9だけある。
このゲームはエンカウントからバトルシーンまでのロード時間が異常に長く、イントロもそれに合わせて3フレーズ続く。ちょうどコマンド選択ができるようになるところぴったりまで前奏が入るように調整されているのだ(ロード時間を長く感じさせないよう、制作陣が明らかに苦心したことを思わせる)。

鈴の音のようなかわいらしいエンカウント音に引き続き、長いイントロ、そして戦闘へ。曲調はこれまでとは違って、懐かしい中世ファンタジー風。これもさすが「原点回帰」を(以下略)。

ポイントは、イントロが主旋律の中にもベースとして入っている点。エンカウントからの45秒間で、何と9回もイントロを聞くことができるのだ。ん?「9」回?これってFF9だから?とすると、待てよ・・・FF8のラスボスの曲では「8」回連続でイントロ音が入っていたような・・・まさか・・・これ・・・ ちなみにFF6のボス曲はイントロフレーズが「6」回だったような・・・

偶然ではない。これ、おそらく計算して入れていると思う。さすが植松さんである。

■おまけ:FFの曲、類似曲探し
●きゃりーぱみゅぱみゅ『もんだいガール』のイントロ
FF9の「バトル1」とほぼそっくりのイントロ音からスタートしている。12秒間で4フレーズ。これは明らかに「狙って」いる。このイントロを使うと曲が一気に華やぐ。いかにも中田ヤスタカさんらしい、ポップで明るい曲だと思う。

●FF9「フェアリーバトル」
エンカウント音が通常戦闘曲のそれなので、思わず身構えるが・・・ワルツのかわいらしい旋律に思わずほっこり。結局イントロは流れないのであった。

●FF3の「クリスタルタワー」とFF4の「街のテーマ」&「飛空艇」
これは「クリスタルタワー」のトラウマ(長すぎる)が平和な「街」と「飛空艇」に昇華されたイメージ。「クリスタルタワー」と「飛空艇」は音程違いの同一メロディラインで、「街のテーマ」はこの2つを髣髴とさせるイメージ。ちなみに、イントロの話とは一切関係ない。


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