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どうしてモノが売れないの-考察


不況というのは端的にモノ(商品・サービス )が売れない状態を指します。いくら見かけ上の株価が上がったからと言って、モノが売れないのですから不況であることには違いない。生活必需品が行き渡った豊饒な社会において、 モノが売れないものだから可処分所得が 下がり、でも人口は減って物価は上がるものですから、消費が急激な勢いでシュリンクするのは当たり前です。「今までと同じやり方」では通用しないわけです。

明確な「答え」があるわけではありませんが、それでも、「考察」を巡らせることはできます。その考察の中に、解決の糸口となるような「気づき」が見つかるかもしれません。


■機能至上主義である

売れないモノって、意外なことに実は「高機能」「高効果」をウリにしていることが多いのです。事実、品質はいいのでしょうけれど、消費者からしたらもうモノは十分にあるのですから、使うか使わないかイメージできない機能はどうでもいいわけです。もっと言えば、「この機能がすごい」ということしかメッセージが見えてこないんですよね。要するに、二の句が「・・・で?」となるモノ。これがさっぱり売れないわけです。

むしろ、「チューナーレステレビ」のように、従来のテレビのコア機能(地上波放送受信機能)を省略したモニターが、売れているわけでしょう。「8K」でも「3D」でもなく、「チューナーレス」ですからね。

■使用イメージが沸かない

生活者としての実際の使用イメージが沸かない商品も、見事に売れません。機能だけ言われても、二の句は「・・・で?」でしかないのです。どんなに経営陣や開発者が力を込めたとて、営業担当者が「一言」でコンセプトを説明できない残念な商品というのはごまんとあります。誰もが一目で「生活の中でどう使うか」のストーリーが描けないと、売りようがないのですよ。

原因は明らかでペルソナ設定の不在(仕様書で使用者を主語にし忘れている)というところなのでしょうが、かといってペルソナに拘り過ぎてもずれてしまうことがあるので、それはそれで難しいところです。ただ驚くほど「自分たちがこう売りたい」という見切り発車でローンチして、「使用者が日常のどんなシーンで使うか」を想定していない残念な商品(売らされる側からしても、ということです)は、たくさんありますよね。

■背後にある真のニーズに届いていない

生活必需品が行き届いたサービス社会における究極の商品ニーズってなんでしょうか?例えば「テレビ」「ゲーム機」「雑誌」「漫画」「本」「スマホ」「SNS」「レジャー施設」「ショッピングモール」は、「娯楽時間」というパイを熾烈に奪い合っており、人間が等しくもっている「時間」という限られた財において、より「快適な時間の提供」ができた者が勝者となる、という仕組みになっています。これをもっと先鋭化させると、「より早く、よりラクに」ということに行きつきます。あるいは、「限られた時間の中で、最大限わくわくさせてくれる媒体」ということにもつながるでしょうか。今挙げた例に限らず、「最小のエネルギー投下で最大の効用を生み出す」-これが、サービス社会に通底する商品・サービスの真のニーズだといえるでしょう。

こういう意味では、一見無関係に思える「スポーツジム」と「旅館」だって、「塾」と「サイクリング」だって、「最小のエネルギー投下で最大の効用を生み出す」サービスを競い合う間接的なライバルであると考えることも可能です。例えばスポーツジムにハマって毎日の習慣が崩れるのがイヤで遠出をしないようにしていた人が、運動プログラムを取り入れた旅館だったら行ってみるかという気持ちになったとか、旧態依然とした「送迎前提」の塾が廃れ、在宅で勉強させられる分、親がサイクリングをする時間が捻出できる学習サービスの需要が高まるとか、そういうことだって考えられるわけです。これは今適当に考えた例ですが、「最小のエネルギー投下で最大の効用を生み出す」という真のニーズが汲み取れていないモノは、これからどんどん売れなくなっていくのではないか、という感覚は否定できるものではなさそうです。

人口ボーナス期における「生活必需品を売って売って売りまくれ」という時代から、人口オーナス期においては「最少時間で最大効果を狙う」ニーズが顕在化していきます。すると、初見で「なんだか大変そう」「ちょっと面倒くさそう」と思わせたら確実にアウト、ということになるでしょう。

思うに、「マイナンバーカード(商品ではないですが)」が初動で全く普及しなかった(ポイントを大盤振る舞いしてようやく半分ですからね)理由は、ひとえにいかにも「面倒くさそう」だからです。今やスマホですべての手続きが完了する時代に、わざわざ役所まで取りに行くというのはいかにも「昭和」までの普及のさせ方ですよね。「最大のエネルギーをかけて、大した恩恵も得られない」のでは、誰も好んで作るはずがないのです。

■初速で失敗

基本的にローンチですぐに話題化できなければ厳しいですよね。「じわ売れ」という現象もあるにはあるのですが、これも結局話題になっているうちに一気に広げるスピード展開ができるだけの「持久力」と「体力」を兼ね備えていないと忘れ去られるのが関の山です。

最初に書きましたけれども、売れないモノは、実は「高機能」「高効果」をウリにしていることが多いのです。変に品質がいいだけに、売れないと「品質がいいことが伝わっていないからだ」とか、「価値を実感してもらうような売り方をしよう」という明後日の方向に議論が行きがちです。しかし、断言します。「機能」は二の次です。大切なのは、「まず、売れること」、それだけです。売れなければ、どんなにいい商品でも宝の持ち腐れ、世に出す意味がありません。

初速で失敗する原因は、(PR不足という物理的な問題もあるかもしれませんが)何より、使用イメージが沸いていないこと、そして背後にある真のニーズを捉えていないこと、でしかありません。そもそも消費者の琴線に触れていないというのに、「でも高機能だから」「品質がいいから」と絶叫するのは、いかにも滑稽だとしか言いようがありません。

売れるか売れないか。まずここが肝心です。「よいモノをつくる」ことも大切ですが、まずは何よりも「売れるモノをつくる(売れるようにする)」ことを考えなければならないのです。

■まとめ

ということで、「どうしてモノが売れないの?」-売れないモノをつくるから-ということになるのです。では、売れないモノをつくってしまうのはなぜ?-使用者の立場に立っていないからじゃない?-ということになるのです。


(つぶやき)

結局のところ、こんなことを考えたくないからこそ、このサイトは収益化していないわけです。「どれだけ読まれたか」はいいんですが、「どれだけ売れたか」まで神経を使っていたら、精神が持たない!

チラシの裏に自由に落書きしたいじゃないですか!


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