トマソンのタイプ

目次

(基本的にちくま文庫刊「トマソン大図鑑」の分類に拠りましたが、「無用シリーズ」は最初の方にまとめました)


無用階段

本来の階段の機能(高さの異なる場所同士を結ぶ)を何らかの原因で失った段々。
階段の出入り口が封鎖されていたり、階段へのアクセスが遮断されているもの。

記念すべきトマソンの第1号(「四谷階段」と呼ばれる)がこのタイプ。

無用門

入り口が何らかの手段で塞がれているもの。

本来の入り口が明らかにそれと分かる形で綺麗に保存されているもので、
無用ドアなどの変種も存在する。

無用窓

窓が何らかの手段で痕跡をとどめながら塞がれているもの。

本来あった窓が様々な事情で封鎖されたもので、どんな窓があったのか、
塞がれた形から想像するのがオツである。

無用橋

かつてあった川が暗渠化などによって消滅し、橋の欄干だけが残ってしまったもの。

都市化の進展に伴い、半ば必然的に登場したともいえるトマソンだ。

ヒサシ

ヒサシとは「庇」のこと。しかし「ヒサシ」は「ヒサシ」であって「庇」ではない。

庇は、窓や郵便受けの上に突き出た屋根のことであるが、これはその下の
窓や郵便受けを雨露、風雪から守る(庇う)ために設置されたもの。

その下の窓や郵便受けが封鎖・撤去されてしまったとき、何らかの事情で庇だけが残り、
守るものがなくなってしまった庇のことを「ヒサシ」と呼ぶ。

ヒサシがある場合、同時に無用窓が見つかることがあるので要注目だ。

ヌリカベ

建物の壁面に見られる絵の具の厚塗りのような痕跡のこと。

不要となった窓や破損箇所の修正の際に、周囲に目立たないようにパッチを当てたつもりが
逆にズレが生じて目立ってしまった、というような物件。

原爆タイプ

以前存在した建物の痕跡が、隣接する建物の壁面に焼き付けられたように残された物件。
原子爆弾によって影が建物に焼きつく光景に酷似していることからこの名前がついた。

密集市街地で、建物と建物の間に唐突に駐車場が現れたとき、この物件が見つかる可能性が高い。
都市再開発や地上げなど、バブルの爪あとを色濃く残すトマソンである。

内面

建物の一部が駐車場化などによって切断されたとき、その切断面が外壁となって露出した物件。

高所

物件があるべき姿から言って常識外の高さにあるもの。物件そのものの異常性ではなく、
物件の位置の異常性がこの物件をトマソンたらしめる点が他のトマソンとは異なっている。

代表的な例は「高所ドア」だ。外壁にドアが付着しているが、それへ通じる通路がないなど、物理的に
その物件へのアクセスが不可能となっているケースである。

でべそ

壁や塀から飛び出た突起物のこと。意味不明な金具、出っ張り、ドアノブ、蛇口などの露出を指す。

ウヤマ

看板や注意書きの文字が欠落または消去されたもの。
看板としての目的を失しても、看板または注意書きたり得ようと頑張っているさまが健気である。

特に、一部消去のあと、その物件の再利用を考えているフシが見受けられるものはトマソン性が高い。

由来は、「卯山○店・○はウヤマ」(ウヤマ第一物件)による。 ※○は欠落部。

カステラ

外壁にくっつく形で突き出たカステラ状のモノ。

建物の内部では倉庫などで有効に利用されている可能性があっても、外部的には「変な感じ」を抱く物件。
外壁が異様にへっこんでいるさまが楽しい「逆カステラ」なるバリエーションも存在する。

アタゴ

道路の脇に存在する意味不明の突起物。

駐車禁止や路肩擦り防止のための列石というケースも考え得るが、
その本来の目的を「逸脱」したものでれば充分にトマソンとして認められる。
ただし、その「逸脱」が「装飾」に達したとき、その物件はトマソンではなくなるとされる。

由来は、新橋から愛宕山へ向かう途中の坂で発見されたアタゴ第一物件群による。

生き埋め

マンホールの蓋など路上の付着物が、道路工事などによって部分的に埋められてしまった物件。
ある道路標示が別の道路標示によって生き埋めされるというケースも見受けられる。

地層

地面に「地層」がにじみ出ているもの。階段とは違う理由で段々が出来てしまったモノ。

道路の拡幅などで、路上断面にいくつかの層(拡幅前後)ができてしまうケースなどが発見されている。

境界

ガードレールや柵が空間を封鎖しているが、実際に何を区切っているのかよく分からない物件。

ねじれ

水平を基本とする建築資材。しかし地面は平地だけではなく、山あり谷ありの世界である。
例えば、ブロック塀などを斜面に建てるとき、水平の建築資材と設置面とに食い違いが生じてしまうことがある。

このように、水平でない部分と部分を無理矢理こじつけて結果的に「ねじれ」を生ぜしめてしまった物件が「ねじれ」だ。
何とか辻褄を合わせようとした努力が垣間見られて涙モノである。

単なる「施工の悪さ」で済まされるケースもあるので分類は難しいかもしれない。

阿部定

電柱など路上の柱状体が、根元(またはそれに近い箇所)から切断されて除去され、
わずかに残された根元の物件。木造電柱のコンクリート化などが生成原因となる場合が多い。

由来は、昭和初期の有名な「阿部定事件」による。

(※)「阿部定事件」 参照リンク: https://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/abesada.htm

もの喰う木

木が、フェンスやブロックなどをパクっと加えながら生えている様子を指す。

自然の力が生み出すトマソンだ。

純粋タイプ

本来、人工物は別の人工物とつながって「無機的な有機ネットワーク」を作ることを期待される。

そうしたネットワークから外れたもの(孤立化したもの)を総称してトマソンというのであるが、
純粋タイプはその「外れ方」が極端なもの・・・極端に孤立したものを指す。

純粋階段(e.g. トマソン第1号「四谷階段」)や純粋トンネル、純粋壁などがある。

蒸発

看板や道路標示などから文字や記号、色素が消滅し、その痕跡が残されている物件。

形成の原因としては、日光を浴び続けたことによる色あせや、店舗の閉鎖などによる物件の
長期的な放置などが考えられる。


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